忌まわしい過去

 

 

 
 
 
『なぜ女性が怖いか』
 
 
 
 
「怖いというほどでは無いが・・・・・・若干苦手意識が・・・・・・・・・」
「だーかーらー、どうしてそうなったのかが聞きたいの!」
目線を逸らすクロストルにマリアが詰め寄る。
「・・・・・・・・・・・・どうしても聞きたいのか?」
「どうしても!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
クロストルはしばらく考え込んだ後、重い口を開いた。
 
 
 
 
 
俺が幼少の頃、父親の指導で英才教育を受けていたのはセバスチャンから聞かされたはずだ
いずれ社長の自分の後を継いでもらおうと考えていたんだろうな、まあ気持ちは分かる
でも俺は物心がついた時から、テレビ等を見て社会の不条理に対する不満を募らせ続けていた
だから社長になるという気は内心無かったな
 
 
「本題!」
「分かってる、分かってる!!」
 
 
 
で、あれは中学生ぐらいの年頃に起きた
 
父親の事業が本格的に忙しくなり(それが原因で過労死してしまった訳だが)、一緒にいることが出来なくなった
それでも父親は何とかして継続しようと、女の家庭教師を俺のところに送ってきた
 
そいつは眼鏡をかけ、グラ・・・・グ・・
 
「グラマラス、でしょ?それぐらいで恥ずかしがっちゃダメ」
「・・・・・・・・・」
 
コホン、グラマラスな肢体の美しい人だった。
割と周りから信頼されているクチらしく、常に俺の身を案じ続けていたセバスチャンも太鼓判を押すほどだった
それなら信用できるという事で、俺は文句一つ言わずに勉強に励んだ
 
 
 
 
しかし・・・・・・・・・・・・
 
 
 
 
 
 
「先生、ここの問題の解き方が分かりません」
学習机(セバスチャン購入)の前に座っていたクロストルが訊いた。
「えっと、ここはね・・・・・・・・・」
いつものように自室で勉強していた時の事だった。本当にいつもと同じ光景だったが、その日だけは違っていた
 
 
 
 
「・・・・・・・・・先生?」
「なに?」
 
 
 
 
 
「どうして、俺の手を握っているんですか?」
 
傍に座っていた女教師の手は、クロストルの机に置いた手の上に重なっていた。
「あら、ダメかしら?」
「ダメとかそういうのじゃなくて・・・・・・その、恥ずかしいので・・・・・・」
今までこんな事をされてこなかったクロストルは頬を赤らめ、困惑していた。
「ふふ・・・・・・男の子のくせに恥ずかしがっちゃダメよ?」
女教師はクロストルの方に詰め寄り、体を密着させる。
「あの・・・・・・だから・・・・・・・・・・・・」
クロストルの手を握る女教師の手つきが段々いやらしくなっていく。
「やっぱり、あなたはこういう勉強が足りないわ。こっちにいらっしゃい」
女教師はクロストルの手を無理矢理引っ張り、ベッドに押し倒した。
「わ・・・・・・・・・!!」
 
 
 
 
「・・・・・・この押し倒された姿、なんて可愛い子なの。やっぱり前々から目をつけていた甲斐があったわ」
 
 
 
 
「!?」
クロストルは衝撃を受けた。
「私はね、健全なお子ちゃまを教育して『目覚めさせる』のが大好きなの。特に・・・・・・あなたみたいな健全の塊をね!!」
女教師は両手でクロストルの服を引き裂き、上半身の裸が少しだけ露わになる。
「ああ、何て程好い肉体なの・・・・・・」
胸の上を唾液に濡れた舌が這いずり回り、クロストルの表情が言いえぬ恐怖に染まる。
「あ・・・・・・ああ・・・・・・・・・・・・・」
 
 
 
 
「今から私が、あなたを立派な男の子に成長させてあげるわ・・・・・・」
 
  
 
「!?やめろ・・・・・・やめっ・・・・・・・・・うあ・・・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「嫌だああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それから先は覚えていない
 
 
気がつけば、俺は乱れた格好で仰向けになっていた
 
 
 
 
 
 
父親はこの一件に頭を痛め、過労にも関わらず無理をしてでも俺と接しようと励み、やがて亡くなった
あの女は警察に逮捕されたが、それでも俺の心の傷が癒えることは無かった
しばらくの間、女を見るたびに奴の顔を思い出しては恐怖に震えていた
 
 
 
 
以来、俺は女と親しくすることを拒んだ
 
 
 
 
 
 
 
「マリア、お前一人を除いて」
 
「・・・・・・・・・・・・やだぁ、かっこいい事言っちゃって」
 
 
 
 
 
 
「それにしても、随分とまぁ変態な教師ね、その人」
「ああ、今度会ったら叩き潰してやる。俺を陵辱した仕返しだ!」
「と言ってもまあ、多分その人メックアイ人じゃないんでしょ?今頃おばあちゃんか、とっくに・・・・・・・・・」
「どうかな・・・・・・・・・」
「え?」
 
 
 
 
 
 
 
 
「最近そいつの事を改めて調査してみたら、タチの悪い魔獣が化けた別人格だったそうだ・・・・・・」
 
 
 
 
 
 
リストに戻る