始まり

 

 

 

 
とある星
 
深夜 廃墟
 
 
 
爆発。
数分後、忍者装束を身にまとった男が廃墟に突入した。
「・・・・・・・・・チッ、逃したか・・・・・・・・・」
煙の充満した部屋の視界が晴れぬままだったが、中の様子を見るなり男は軽く舌打ちした。
床には鉄片、コード、挙句ネジといった部品が散乱。察するに大方、この部屋には何らかの大型装置が置かれていたと思われるが
すでに先程の爆発が跡形もなく吹き飛ばした後だった。
「ん?こんな時に電話が・・・」
飾り気の無い、簡素な着信音。
男は懐から通信機を取り出し、応答する。
 
『どうだ、ヤミカゲ。あいつは始末したか?』
「・・・後一歩のところで逃げられた、デリバリーシステムで。しかも脱出直前にバズーカで破壊していったらしい」
『何?みすみす逃がすとは、この役立たずめ!!』
通信機越しに耳元で怒鳴られ、ヤミカゲは無意識に耳から遠ざけた。
「・・・ふん、裏切り者に言われたくは無い。遺言状に踊らされ、ナイトメア社に寝返っておきながら己の悪行を棚上げか」
『はん!お前も人のことを言えまい、裏切り者!』
ヤミカゲは銀河戦士団の一員でありながら、かの悪名高き宿敵、ホーリーナイトメア社に乗り換えた裏切り者。
忍者の世界で言うなれば、“抜け忍”といったところだろう。
『・・・で、目星はついているのか?』
「このタイプはシステムとサーバを同じ場所にまとめていない。完全に破壊はされていないだろう」
部屋を抜け、デリバリーシステムを管理していたであろう場所を探しに行った。
「転送履歴を基にその場所へ向かい、奴を見つけ次第・・・・・・殺す」
 
 
『そうか、ではせいぜい健闘を祈る。きっちり仕留めろよ・・・!』
 
 
 
 
 
 
一方、ポップスターでは
 
真夜中
 
デデデ城 玉座の間
 
 
誰も居ない玉座の間にて、役目を失ったはずのデリバリーシステムが突然動き出す。
何者かによる物質転送確認のシグナルをキャッチし、巨大モニター、パラボナアンテナ、あらゆる機器が部屋中に姿を現した。
出力ユニットの台座から強い光が放たれ続ける。
 
転送終了。
光の消えた台座に立っていたのは、一人の少女。
出血している腕を緑のバンダナで止血処置を施し、体はもはや満身創痍といえるほどボロボロに傷ついていた。
血塗れの体のまま台座から降り、いるはずのない追跡者の存在に怯え、ゆっくり歩き出した。
「・・・・・・逃げないと・・・・・・早く・・・・・・!!」
この時、彼女は気づくはずもなかった。
いや、気づいたところでどうしようもなかっただろう。
今にも力尽きそうな手負いの少女にそこまで気を遣う余裕などなかった。
 
通った跡に、血痕を残していたことに――――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『逃げてきたシリカ』
 
 

 

 

 

 

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