アフター※一部キャラ崩壊あり

 

 

 
 
 
 
『・・・・・・分かった。デスダンデリオンは跡形も無く崩壊したのだな?』
「そうだ。一部 破片 落ちたかも 分からん」
『では、最寄りの帝国兵をそちらに派遣する』
「了解。こちらは用件も済んだ、直ちに帰還する、マター中佐」
『了解、直ちに本部へ帰還せよ、ネクロスマター』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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「おーう。目ぇ覚ましたな、がきんちょ共」
 
 
 
 
意識の回復した双子が真っ先にかけられた言葉。
彼女らは辺りを見回し、命を救われたのだと初めて気づいた。
 
「言っておくけどよ、お前ら助けたの驚く無かれバーム父ちゃんだ!きちんと礼言えよな」
 
 
 
 
デスダンデリオン稼動時、双子はあまりの暑さに脱水症状を起こしていた。
あのまま助けが来なければ、本当に死に至っていたとリムラは言う。
 
双子を探しにヘビースターを駆っていた一同は、森の上空でおかしな現象が起きていた事に気づく。
木々が空へと吸い込まれるように巻き上げられ、落下。
このような芸当が出来るのはプププランドにおいてカービィ一人しかいない。
意外にも、森へ飛んで行くカービィの姿をフームが肉眼ギリギリで捉えた事が確信に繋がった。
彼は何かを伝えようとしている。
そう主張した彼女の予想通り、カービィが合図を示したポイントの場所には双子がぐったり倒れていた。
 
慌てて駆けつけようとするフームたちだが、そこをリムラが制止。
あえてバームに先を行かせ、二人の体を日傘型ビットで保護した。
彼女らに父親として認めさせる功績を立てようと考えた、リムラによる計らい。
あまりにも症状が酷いので最悪の結末を考えたが、結果的に命に別状は無かった
 
光も弱まり始め、元の夜空が暗闇を取り戻していく。
カービィが撃破に成功したのだ。
デスダンデリオンの残骸は大量の星屑となって、地上へ降り注いだ。
この時の景色は格別なものだったと村人は語る。
 
 
 
「・・・・・・・・・お父様・・・」
「・・・・・・ごめんね、俺たち勝手な事して・・・」
 
今回の一件は、勝手に城を抜け出して行った双子にもある程度の責任があった。
デスダンデリオンの事は想定外だとは言え、軽率な行動で命の危険に晒されていた事実は否定できない。
説教、あるいは拳骨も覚悟の上だった。
 
 
 
「・・・・・・良いんだ、全部パパが悪かったんだ」
 
 
しかし、バームは娘たちを怒らなかった。
むしろ感動さえした。
あれほど大人しい双子の娘が、小さな冒険を出来るようになるまで成長したとは。
 
 
「今度からはずっと一緒に暮らそう。ママが帰ってきたら、退院お祝いパーティーの準備もしなきゃな!」
「・・・お父様・・・・・・」
「・・・俺たちの事、怒らないの?」
 
 
 
 
 
「何を言ってるんだ、パパには怒れないさ。ちょっとした冒険にも行けるほど逞しくなって、誇りに思える娘たちを」
 
 
 
 
バームの前向きな答え。
抱き付き、涙を流す双子。
それに応え、子供たちを優しく抱きしめるバーム。
ダークトリオは思わずもらい泣きしたが、事情の把握ができていないカービィには何の事だかさっぱりだった。
 
「ぽよ・・・・・・?」
 
 
 
 
 
 
「バームじゃないか、久しぶりだな!」
「おお、兄さん!」
 
兄のパーム大臣とも数年ぶりのご対面。
互いに顔を見合わせ、懐かしさが込み上げてきた。
 
「パームの奥様ですよね?この度はうちの娘たちがお世話になりまして」
「とんでもありませんわ。私たちこそお子さんがピンチなのに何も出来なくて・・・・・・」
「聞いてるぞ、バーム。子育ての事でリムラ君に説教されたんだって?」
「そっちこそ、相変わらずデデデの下で働いているんだって?」
「いやいや、さすがにもう慣れたよ。それより、今回の一件でもう改心したかね?」
 
「勿論だとも。今度は従業員からやり直すよ。心機一転、一からのスタートだ!」
 
 
 
 
それを聞いたシック、苦そうな顔で思わず呟く。
 
「ええっ・・・・・・・給料下がったら、もう霜降り肉買えないじゃん・・・・・・」
「シック!!よしなさい、みっともない!」
 
「はっはっは、霜降り肉はママが退院する日まで買えるよう、頑張って働くよ」
 
「サンキュー!!」
「シック!!!!」
 
 
 
 
 
「大臣殿、お話が・・・って、パーム殿が二人!?」
 
ノックの後に部屋へ入ったワドルドゥ、同じ顔が2つ並んでいる事に大いに驚く。
 
「こちらは?」
「ワドルドゥ隊長さ。それより、何かありましたか?」
「それが・・・・・・」
 
 
 
 
 
「ディガルト帝国調査団を名乗るものが、“デスダンデリオン”とか言う人工太陽のことでバーム殿に話があると・・・・・・」
「!!」
 
バームの顔色が変わった。
すでに終わった事とは言え、やはり帝国に目星をつけられる運命か。
 
 
「こちらが、バーム殿でしょうか?」
 
 
二人の顔をまじまじと見つめ、両者の違いを認識した。
 
「帝国兵がお待ちですので、速やかに来て下さい」 
「・・・・・・私は行くよ、パーム」
「しかし君はこの件に関して、何も関係は無い。そうだろう?」
 
バームはあくまで、自分の技術が悪夢の兵器に転用される事を拒んだだけ。
彼には何の落ち度もない。
 
「いや、私は技術者として果たすべき責任は果たさないといけない」
「・・・?」
 
 
 
 
 
「デスダンデリオンも、元は平和利用のために作り出された人工太陽。そして・・・・・・その開発には、実は私も携わっていた」
 
 
 
 
 
「!!」
「まぁ!!」
「すっげー、マジかよ!!」
「お父様、何時の間に!?」
「叔父様・・・・・・!!」
「すっげぇ・・・!!」
「・・・・・・ぽよ?」
 
 
 
「紫外線の量を調節し、肌に優しい日光を地表に届ける技術を私は提供したんだ。私もデスダンデリオン、いや、ピースダンデリオンの一開発者。
だからこそ、義務を果たさなければならない。技術者の倫理とプライドにかけて」
 
 
バームの意志は固い。
何を言っても聞く気は無いだろう。
引き止めるだけ時間の無駄であり、彼の意志を傷つける事になる。
 
 
「・・・少し待っててくれ、子供たち。すぐに帰ってくる」
「バーム」
「?」
 
 
 
 
「・・・ならば、私は一人の技術者の兄として、その勇姿を見届ける権利がある。私も一緒に行こう」
 
 
 
 
「・・・・・・済まない、兄さん」
「気にするまでも無いよ、こういうのは昔からお互い様じゃないか」
 
 
 
パーム兄弟はワドルドゥに案内され、部屋を退出。
フームはディガルト帝国の事が気になって仕方ないらしく、後からこっそり一人でついて行った。
カービィもお腹が空いたのか、城の食堂へ勝手に抜け出した。
そして、メームも、ダークトリオも。
 
 
 
 
 
 
残されたのはリーロとシック、そしてブンの3人。
重苦しい、悶々とした雰囲気が漂う。
この沈黙を先に破ったのはブンだった。
 
 
「・・・・・・ごめんな、俺が間違いで変な事言っちゃったせいで・・・・・・」
「兄さまが誤る事じゃないよ。無茶した俺たちがずっと悪いもん」
「・・・ごめんなさい、お兄ちゃん・・・・・・・・・」
「・・・リーロ、シック。俺、はっきり言うよ」
「「?」」
「俺さ、妹とか女の子だとかそういうの抜きにしても・・・・・・」
 
 
 
 
 
 
「お前らの事、好きだよ」
 
 
 
 
 
 
「・・・・・・お兄ちゃん!!」
「兄さま!!」
 
思えば、姉妹の誤解が招いた今回の騒動。
ブンは初めから二人の事など、嫌いでも何でも無かったのだ。
 
 
「むしろ俺の方がビクビクしてたよ。リーロたちに嫌われたんじゃないかって」
「そんな事ないもん!ボクお兄ちゃんの事大好き、嫌いになんかなれない!!」
「ハハ、ありがとう」
「俺だって兄さまの事大好きだぜ!」
 
 
 
 
 
「俺、大きくなったら兄さまと結婚するんだ!!」
 
 
 
 
 
「・・・・・・・・・・・・え?」
笑いが止まるブン。
シックの口から飛び出た、衝撃の爆弾発言。
それは一般世間において近親婚を意味するが、二人は当然知る由も無い。
 
「ねえ兄さま!!男の人と女の人ってお互い好きなら結婚しても良いんだよね!?」
「え?ま、まあ・・・・・・でも身内同士は」
「何を言っているの、シック!!」
 
そうだ、言ってやれ。
肉親同士で結婚するなんて、ちゃんちゃらおかしい。
いくら好きだからって、さすがにそれだけはいただけない。
 
 
 
 
「ボクこそがお兄ちゃんと結婚するに、一番ふさわしいんだから!!!」
 
 
 
 
違う。
俺が求めていた答えと違う!
 
「臆病者の姉さまは黙っててよ!俺が、兄さまのお嫁さんとしてお似合いなの!!」
「馬鹿なこと言わないで!ボクだってお兄ちゃんの事が大好きだもん!!!」
 
二人とも何を言ってるんだよ、デスダンデリオンに頭やられておかしくなっちまったのか?
 
「ボクがお兄ちゃんのこと一番分かってるもん!!お兄ちゃん大好き、大好き!この世で一番大好き!!」
「俺だって兄さまのこと好き、好き!!宇宙で一番大好き!!!」
 
だとしたら叔父さんも罪作りなもの造っちゃったよなあ。
お宅のお子さんこんな酷い事になっちまってるぜ。
どういう風に教育したらこうなるんだよ!
 
「お兄ちゃん、ボクとキスして!!」
「えっ!!?」
「ボクの事大好きだから、キスもへっちゃらだよね?」
「え・・・・・・あの・・・・・・」
 
「いいや、俺が兄さまとキスするんだ!どいて!!」
「きゃっ!!」
「だから・・・・・・そうじゃなくて・・・・・・・・・」
 
「妹のくせに生意気よ!ボクがお兄ちゃんのお嫁さんになるの!!」
「わあっ!!」
「いい加減に・・・・・・しろよ・・・・・・・・?」
 
ブンの怒りは段々と頂点に達しかけていた。
この姉妹、いっぺん無理矢理にでも言い聞かせてやらないと気が済まない!
 
「ボクが!!」
「俺が!!」
 
 
 
ブチィッ!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
い・い・か・げ・ん・に・しろぉーーーーーーー!!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「わあっ!?」
「きゃあっ!?」
 
何かが“切れた”ブン。
二人を強引にベッドの上に押し倒し、その上から圧し掛かった。
 
 
「お前ら口ばかり言いやがって!!本当にキスしたいと思うのか!?いいか、キスってのはなぁ、お互いの口の中にベロ突っ込んだりしてネチョネチョ舐め合うんだぞ!?」
「えっ!?」
「うっ!!」
 
それはディープキスの話だったが、あえて持ち出した。
二人にキスが怖いものだという認識を植え付け、二度と馬鹿なことが言えないようにするためだった。
 
「ほらキスしちゃうぞー?ベロ入れちゃうぞー?気持ち悪いぞぉーーー!?」
「やだっ、やめて、お兄ちゃん!!」
「放して、兄さま!!」
 
「ぶっちゃけ言えば、身内同士で結婚してはいけないって法律で決められてんの!!だから、俺と結婚したいなんて馬鹿なことにぢと言うな!!!」
 
「ごめんなさい、ごめんなさい!!」
「許してぇ、兄さま!!」
「いーや、絶対許さない!!お前らが俺以外の人と付き合うって誓わないと嫌なことしちゃうぞぉ!!」
 
「誓う!誓うって!!」
「怖いよぉ、お兄ちゃん・・・!!」
「何だよ、お兄ちゃんお兄ちゃんって・・・・・・人前で言われて恥ずかしい俺の身にもなってみろ!!シック!!!」
「ひっ!?!」
「いっつもいっつも姉ちゃんの事呼び捨てにしやがって・・・・・・ほっぺたつねっちゃうぞぉ!?」
「わあっ、痛い、痛い!!」
「お前もだ、リーロ!!二人そろってお仕置きだ!!」
「やめてぇ、お兄ちゃん・・・・・・痛っ!!」
「いひゃい、いひゃいふぁらふぉうゆうひへ(痛い、痛いからもう許して)・・・・・・・・」
「へっへーん、泣いちゃうまでつねってやるもんねーだ!!」
 
日頃の鬱憤を交え、暴走を続けるブン。
これが再び恐ろしい誤解を招こうとは思ってもいなかった。
 
 
 
 
 
 
 
ドスン。
木槌が床を叩きつける音。
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・・・・・・・・・ブン・・・・・・・・・!!!」
 
 
 
 
 
「・・・え?」
我に返り、扉の方へおそるおそる振り向く。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「デ、デデデ・・・・・・・・・・・・・!!!!」
 
 
 
 
 
デデデ大王とエスカルゴン。
思えば根本的な誤解は全てこの男たちが招いたようなものだった。
 
 
「貴様ぁ、プレイボーイどころか親戚の妹まで手に掛ける男だったとは・・・・・・見損なったぞい!!!」
「前からとんでもないガキとは思っていたでゲスが、まさかここまでとは!!!」
「ち、違うんだよ!!こいつらがおかしな事ばかり言って困らせるから、しつけをしようとしただけで・・・」
 
 
 
「まさか残骸の回収許可を取りに来ただけだったとはなぁ。拍子抜けだ」
「良いじゃないかバーム。終わりよければ全て良し、だ」
「あれ?何でデデデが・・・・・・」
「陛下、一体どうなさい・・・・・・!!?」
 
更に運悪く、パーム兄弟とフームにまで現場を見られてしまった。
 
「「なっ!?」」
「ブン!!!これはどういう事なの!!?」
「怖かったよぉ、フーム!!」
「お兄ちゃんがおかしくなっちゃったの!!」
「いや、だからこれは・・・・・・」
 
 
 
 
 
「ブン」
 
 
 
 
 
 
 
それ以上、何も反論できない。
この日、ブンは世界で一番恐ろしいものを目にした。
魔獣よりも、ナイトメアよりも全然怖い、姉の怒りの形相を。
エミジにも匹敵する邪悪な笑み。
しかし目は全く笑っていない。
デスダンデリオンの熱波など蚊に刺された程度にしか感じられない、人生最大級の恐怖。
指の骨をパキポキ鳴らす音が部屋中に響く。
ブンは恐怖に打ちひしがれて動けない。
 
 
 
 
そして、姉の放った凄まじい重圧の込められた言葉。
 
 
 
 
 
「覚  悟  は  出  来  て  る  わ  ね  ?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
後にブンは語る。
 
 
 
 
姉こそが、世界で一番敵にまわしてはいけない相手だと。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「誤解だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 
 
 
 
 
 
 
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