11・23・・・加筆修正
銀河大戦の状況は、ギャラクティカベース陥落を機に一変。
残された星の戦士たちはキャラバン形態での移動を余儀なくされ、非常に不利な戦いを強いられた。
更に量産化したデスタライヤーも追い討ちをかけ、生存者数は徐々に減少。
3,4000年後には全体の99%が遂に全滅。
これを機に、銀河大戦は自然と終結に向かっていった。
劇的大勝利を収めたナイトメア軍は、首領の一案により通信販売会社「ホーリーナイトメア社」に転身。
元悪徳ビジネスマンのカスタマーサービスを秘書に雇い、宇宙中の悪党に望み通りの魔獣を売りさばいた。
その気になれば客のオーダーに合わせた魔獣をイチから創り上げることも可能。
結果、数年のうちに会社は大規模に膨れ上がり、宇宙一のモンスター企業と化したのである。
『調子はどうですか、ガルクシア?』
要塞に設けられたオフィスの一室。
金勘定に勤しむガルクシアの前にモニターが現れ、カスタマーサービスの顔が映された。
ナイトメア軍の企業帝国への転身以来、ガルクシアは実績を買われ「会計役」のポストに就いていた。
若かりし頃、女性を“メスブタ”と罵り金を奪っていた彼にしてみれば皮肉な役回りである。
「調子も何も、金の集まりが顧客によって極端に悪すぎる」
『と、申しますと?』
「この“デデデ大王”という奴は何なんだ!!京単位に達するツケを溜め込んでいるなど、常軌を逸してる!!!」
一枚の報告書をモニターに見せつけ、怒りを訴える。
桁数が明らかに10桁を超えているのがよく分かった。
『ホホホホホ、そいつは致し方ありません。代金を支払わない癖は昔からですので』
「フン!!後こいつだ!!同じ一国の王でもデデデ大王よりマシなのに、支払いを渋りやがって!!」
もう一枚の書類を突きつけ、更なる怒りを顕わにした。
『そちらは、そうですねぇ。必要と在らばそれ相応の措置を取っても構いません』
「分かった。マッシャーでも送っておけ、潰す」
『了解しました』
椅子にもたれ掛かり、机に足を乗っけて雑誌を広げた。
中身は勿論、彼の趣向に沿った如何わしい趣味が中心。
緊縛され、悩ましい表情を浮かべる女性の写真が大量に掲載されていた。
捲った次のページに至っては口に出せないぐらい濃密で、人前で堂々と広げるのも躊躇われる。
『相変わらず、そういうのがお好きな様で。私は好きになれませんが』
「煩い、黙れ」
淡々と言い放つガルクシア。
『そうそう、ヤミカゲの奴が「話がある」と・・・』
「ん?」
______
要塞内に設けられた休憩用のロビー。
観賞用の植木やソファーが申し分程度に配置されており、何とか体を成している。
ガルクシアを呼び出した張本人のヤミカゲはと言うと、入り口の丁度近くの自販機にもたれかかっていた。
「何の用だ、ヤミカゲ?」
「・・・ナイトメアの奴が考えていることは分かったものではないな」
「は?」
言葉の意味がよく分からず、首を傾げる。
あの男はまた良からぬ事を企んでいるのだろうか。
「コールドスリープから目覚めた、貴様の娘に凶悪な武器を授けたのだ!!」
「・・・俺の娘?」
まさか、と耳を疑うガルクシア。
あいつが?
今も生き延びているのか?
てっきり戦火に呑まれて息絶えたものとばかり思っていた。
しかもコールドスリープだと?
まさか、銀河戦士団の連中が余計なことをしたのか。
「そうだ!更に何を考えているのかは知らんが、母を殺したのはメタナイトなどと嘘を吹き込んでいた」
メタナイト。
奴もまだ命が在ったか。
つくづく星の戦士というのはしぶとい生き物だ。
「・・・ナイトメアはこの期に及んで、ギャラクシアの奪還に固執しているらしい。だが、そんなものはマッシャーにでも任せれば・・・」
「違うな」
「何だと?」
ヤミカゲが真意を問い質す。
「随分と粋な事をするものだ。かつての戦友の子に、復讐の刃を握らせるとは」
何が面白かったのか、ヤミカゲには理解できなかった。
しかし、彼が頭の中で考えていた事だけはある程度予想がついていたらしい。
「・・・相討ちを望んでいるんだな。まだシリカの事が憎いか」
「シリカだけじゃない。銀河戦士団それ自体も憎い」
「ふ・・・・・・さて、俺も行くか。御指名だ」
「何処にだ、ヤミカゲ?」
その場を後にしようと立ち去るヤミカゲ、背を向けたまま問いに答えた。
「デデデの所へ、だ。忍者の極意が記された巻物に興味があるのでな、話に乗ってやった」
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『今日は大事な用件があります』
モニター越しのカスタマーが改まった様子で口を開いた。
「言ってみろ」
『実はこの度、我が社の一員として働きたいと申し上げる方がおりまして・・・・・・』
新入社員。
この企業は表向きこそ善良な会社を装っているが、正体である魔獣販売に就ける外部者はごく僅か。
今時珍しいものだ、と独り言を呟いた。
「どこの部署を所望だ、そいつは?」
『確か・・・・・・』
そこへ突然のノック。
「ちーっす、ガルクシアって奴は此処か?」
子供の声。
しかも呼び捨て。
第一印象は非常に悪い。
腹を立てたガルクシア、サーベルを振り抜きドアを切り裂いた。
木製のドアはバラバラに崩れ落ち、向こう側にいた人物の正体が明らかにされる。
「・・・・・・おいおい。大人のクセに大人気ねーな、オッサン」
ガルクシアは我が目を疑った。
白髪に紫色の皮膚、赤い胴衣に緑色の鉢巻付きヘッドギア。
尖った耳が特徴的な顔。
背の低さも相まって、その容姿は明らかに子供だった。
「おい、カスタマー!!こんなガキを俺にどうしろと言うんだ!?」
冷やかしも大概にしろ、と憤るガルクシア。
次に返されたカスタマーの言葉に耳を疑う。
『その子供はナックルジョーと言います。なんでも、魔獣を使役するテクを伝授して欲しいとの事で』
伝授。
つまりこの子供は自分から魔獣調教師の仕事を志願しているという事か。
言わば、弟子入りのようなもの。
しかし、最初の無礼な態度からナックルジョーの事が甚く気に食わなかった。
「つー訳だ。よろしくな、オッサン」
「っ・・・・・・!!俺はオッサンじゃない、ガルクシアだ!!!」
「へいへい、オッサン」
「・・・・・・!!!」
何という無礼な子供だ。
この喋り方、この破天荒な容姿。
一辺、親の顔が見てみたい!
あくまで平静を装い、咳払いの後に言った。
「俺はこう見えても生粋のサディストだ。タダで魔獣調教師の免許が取れると思うな、容赦なく扱かせて貰うぞ」
「・・・へっ、熱心なご指導に期待させてもらうぜ」
ナックルジョーの表情には、死地を潜り抜けたかのような余裕が表れていた。
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普段と変わらぬ毎日を過ごしていたある日。
「・・・・・・?」
以前ヤミカゲと話したロビーの一角にて、見慣れない男の姿を見かけるガルクシア。
元気の無さそうな表情で椅子に座っていた。
「おい、誰だお前は?」
相手が幹部クラスの社員かどうかを考えるまでもなく、下っ端だと勝手に決め付けた。
これで予想と違っていたら大目玉を食らわされる。
「え?ああ・・・・・・僕はこの度、契約魔獣として此処に雇われたチップと言うんだ」
「契約魔獣?一体何のだ?」
「教師だよ。”魔獣教師”のジャンルがあると聞いて来たんだ」
「ふん、ここは職安じゃないんだぞ。他所に行け、そんなもん」
「君の言うとおりさ。本当は僕みたいな人が来るところじゃない。だけど・・・」
「仕事が、見つからないんだ」
「・・・・・・お前、この年になって将来が定まらないのか!?」
思わぬ勘違いのガルクシアに目が点になったチップ。
「違うよ。誰も雇ってくれないんだ」
「何故だ?今のご時勢、一部の星じゃ学級崩壊などと囁かれている。そういう時こそお前のような奴の出番だろう」
「・・・親の敷いた人生のレールに黙って沿えば、ちゃんとした教師になれたんだ。けど、僕は自分から道を降りた」
「・・・・・・勿体無いことを」
「ああ、そうさ!!」
「!」
「おかげで正規の教員免許を持たない僕を、まともな教師として見てくれる人はいなかった!」
チップの言うとおりである。
世の中、免許や肩書きも無しに職にありつけると思ったら大間違い。
かく言う自分も魔獣調教師の資格を持っていたからこそ、こうしてナイトメアの下に置かれたのだ。
「・・・それでも、一つぐらいは受け入れてくれる所もあるだろうと思い、転々としてきた・・・だけど、もう限界だった」
「そこへホーリーナイトメア社の誘いか」
「ああ。住む所はまだしも、食べる物もお金も無い生活には耐えられなかった」
「・・・・・・・・・」
「そして僕は今回、プププランドへ向かえと命令された。カービィを始末すれば教員免許をくれてやると言われ、誘惑に負けた」
「可哀想な奴だ」
無慈悲にそんな言葉を突きつけた事を、少なからず後悔する言葉が返される。
「笑うなら笑ってくれ。所詮僕は負け組さ」
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更に月日は流れ、ある日の事。
何時ものようにオフィスで金勘定の後、定期購読の雑誌を黙々と読んでいた時だった。
「何?戦艦ハルバード?」
『はい。メタナイトは兼ねてより、隠し持っていた設計図を元に建造を進めていたようで』
宇宙戦艦ハルバード。
銀河戦士団を離れ、その名もすっかり忘れて久しい。
何時の間に完成させていたとは、実に侮れない。
「・・・俺たちはどうするんだ?」
『要塞の守りを固める他ありません。奴らは既に重力波干渉砲の技術を完成させたのですから』
「何と、まあ・・・・・・デスタライヤーもお陀仏だな・・・」
『対空レーザー砲、内部の防衛システムも配備が遅れています。が、奴らは絶対に要塞を攻略する事は出来ません』
「何故なら?」
『どれだけ要塞を破壊されようが、閣下の秘密を暴けぬ者には決して勝利は訪れませんから』
「ほう。ナイトメアにも弱点が在ったのか・・・・・・」
『ええ。・・・特別にあなたにだけ話しましょう。ごにょごにょにょ・・・・・・』
「・・・・・・成程。じゃあ要塞の守りがザルでも、誰も倒せないに等しいな」
『ですから、閣下は“ほぼ”無敵。とは言え、くれぐれもこの事は内密に・・・・・・』
「分かっている」
数時間後、要塞全体にハルバード接近を知らせる放送が流れた。
大事な商品であり、戦力でもある魔獣を失わせない為、要塞とは全く別の場所にある施設へと転送される。
ヘビーロブスター「H-9☆」一機、エアライドマシンライダー系を除いた全魔獣の誘導を2,3時間で手際良く終わらせた、
気分転換に散策を始めるガルクシア。
悠長に時間を無駄に使えるのも、これが最後だろうから。
「・・・・・・・・・?」
ホバーカーゴで回廊を移動していると、妙な気配を感じる。
辺りを見回すが、特に見慣れぬ物は無い。
「上か?」
上方を見上げると、黒い巨大な何かが落下し、ホバーカーゴに飛び乗った。
衝撃で船体が大きく揺れ、振り落とされそうになる。
「な、何だ!?」
見た所、巨大な化け蜘蛛の姿をした魔獣。
避難し遅れた個体がまだ居たのだろうか?
「いってぇ~~~・・・・・・このダークスパイダー様とした事が、無様に逃げ遂せなくちゃいけねぇなんてよォ・・・・・・」
ダークスパイダーと名乗る化け蜘蛛は、こちらの存在に気づいていない。
「おい」
「うおぉっ!?何だ、人が乗っていたのかよ!!」
ようやく気づいたものの、あまり良い顔をしていない。
先程の独り言からして、何者かに追われているのだろうか。
飛び立とうとする化け蜘蛛に逃走の理由を訊ねてみた。
「お前、何から逃げているんだ?ナイトメアの魔獣の癖に、ファンファンのように裏切るつもりか?」
「ハァ!?あんなケツアゴの部下なんざ、死んでも御免だね!!ギチギチギチッ!!!」
「!!」
ダークスパイダーの発した奇怪な笑い声は、過去に聞いたものと同じだった。
記憶の糸を手繰り、目の前の化け蜘蛛と同一の者を探す。
ギチギチ。
前にもこんな奇妙な笑い声を発した奴がいた。
それは一体誰だ?
そうだ、確か自分に義眼を提供してくれた奴と似ている。
あれは確か、喋り方が不気味で気持ち悪かった。
まさか。
「・・・お前、あの時の闇医者か!?」
「ギチッ!?そういうお前も、あの時の!!」
命の恩人との再会を喜ぶガルクシア。
ダークスパイダーもようやく思い出したらしい。
「久しぶりだな!よもや魔獣だったとは!!」
「失礼な!元から魔獣だよ、ありゃ仮の姿だっての!!」
「・・・しかし、一体何から逃げているんだ?」
「それが非常に厄介でヨォ・・・・・・ヤベ、追って来た!!」
8本の足に踏ん張りを利かせ、カーゴから飛び降りた。
「あっ、おい!!」
「テメェもこっから脱出しな!!ナイトメア如きじゃカービィには勝てねーよ!!!」
それだけ言うと、壁に張り付いて走り去ってしまった。
「・・・カービィには勝てない・・・・・・?」
言葉の意味を探る暇は無かった。
後方から4機、同タイプのホバーカーゴが迫り来る。
「・・・・・・何だ?アレが追っ手か?」
後ろを振り向いた時、カーゴを運転していた4人の騎士が一様に驚く。
こちらから見て、左はピンクの体、右は赤いモヒカンの個性的なメンツ。
ガルクシアもまた、中央のカーゴを運転する黄金色の甲冑の騎士と、斧を携えた騎士について酷く見覚えが在った。
「・・・・・・・・・オーサー、ノイスラート・・・・・・・・・!!!」
その名を呟くと、向こうから反応が返って来た。
「・・・・・・こんな所で再び会おうとはな・・・・・・裏切り者、ガルクシア!!」
「本来なら喜ぶべき再会なのだけどね・・・・・・君には失望したよ」
「お主の悪行は我輩の耳にも届いておるぞ!!父親でありながら子殺し未遂とは、全く許せん!!!」
「・・・貴様には同情する気が失せた・・・・・・!!!」
それぞれ、侮蔑と軽蔑を込めた冷酷な視線をガルクシアに送る。
「ふん、負け犬がどうとでも言え。悪いのは貴様ら腰抜け戦士団と、シリカだ」
「まだ言うか!!ガールードは性格上、遺言状そのものを甚く嫌っていた!!」
「・・・・・・・・・・」
「だから彼女には、下手な事を書いて醜い争いを起こす気など毛頭無い!!お主は騙されておるのだ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「何故冷静に考えて分からないんだろうね。ガールードは君も娘も平等に愛していたのに、遺産を娘一人だけに残す筈無いだろう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「シリカが持ち去ってきた遺言状だけどね、アレ、何だか違和感が―――」
「ノイスラート卿、今更諭しても無駄だ!!此処で切り捨てる!!!」
「やれるものなら、やってみろ」
軍帽の宝石が開眼、エメラルド色の輝きを発した。
「俺は強いぞ」
電磁鞭を振るい、発生した幾多もの雷の球がカーゴを襲った。
「くっ!!」
「おのれガルクシア!この我輩が正義の名の下に、成敗して・・・・・・」
剣先にエネルギーを集中させ、ソードビーム・レイの発射態勢に入る。
「待て、パルシパル!!」
「止めるな、オーサー卿!!この輩だけは生かしておく訳にはいかん!!ガールードの名誉にかけて!!」
「!!」
「貴様如き、ガールードを語るな!!!」
ガルクシアの逆鱗に触れ、更に大量の雷球が発生。
唯一手が空いているノイスラート卿ぐらいしか手が出せなかった。
「貴様だと!?おのれ、誇り高き戦士に向かって・・・・・・!!」
「止せと言っている、パルシパル!!」
「何故!!」
「今、我々がすべき事を弁えろ!!!」
「ッ・・・・・・・・・・・・!!!」
強く諭され、戦闘態勢を解くパルシパル卿。
そのまま4人はガルクシアの追跡を止め、離脱した。
「・・・・・・何をするつもりだ?」
深追いはしなかった。
ダークスパイダーの言う事が正しければ、程無くこの要塞は陥落する。
自分も早い内に此処を発たねば。
だが、その前に確保しておきたい人員が居る。
≪ハルバード、要塞地表を滑空中!!シールドを展開した模様!!!≫
更に数十分後、要塞内にカスタマーサービスのアナウンスが流れる。
普段と違って口調が緊迫している。
すぐ後に、全てのエアライドマシンライダーは出撃せよ、との旨が付け足された。
カーゴの飛行速度を上げ、目的地へ向かう。
≪緊急事態発生!!デスタライヤー3機、侵入者共によって奪取!!反逆行為を直ちに鎮圧せよ!!!≫
「うわあっ!!お前はガルクシア!?」
自動扉を足で蹴破り、強引に押し入った。
TEAM H-TYPE専用の開発室。
「こんな時に何の用だ!」
「全員、俺と脱出しろ。既にナイトメアに見切りをつけた」
「な、何を言ってるんだ!!閣下が負けるはず無かろう!!」
「俺の言うとおりにしろ。死にたいのか?」
半ば脅しをかけられ、半強制的にガルクシアの命令に従った。
「機体を全て運び出すのに時間が掛かるぞ!」
「設計図だけで良いだろう、材料さえあれば何時でも作れるだろうに・・・」
「はぁ・・・・・・デリカシーが無いんだから、全く・・・・・・」
「・・・何だと?」
「ヒィッ!!い、いや!何でもない!!」
「早くしろ。デリバリーシステムまで遠いぞ」
要塞内に数あるデリバリーシステムのうち、最も近い方を選択。
必要な物と彼らが一番大事にしているヘビーロブスター一機をカーゴに載せ、疾走。
他の職員もヘビーロブスターに搭乗し、後に続いた。
「これは何というロブスターだ?」
真後ろの巨体を指差し、訊ねた。
「H-13B “カロンゼット”さ。長らく開発が停滞していたH-13シリーズの最終作だ」
「カロンゼットか・・・・・・俺が貰っても良いか?」
「だ、駄目だ!!これは我々の最高傑作で・・・・・・」
「貰 っ て も 良 い よ な ?」
「・・・・・・どうぞ・・・・・・・・・」
カーゴはデリバリーシステムの在る転送室に到着。
遥か遠方の星にある支社に座標軸をセットし、起動。
職員やヘビーロブスターが次々と転送され、最後にガルクシアが飛び込んだ。
_____________
「ぐあぁ~~~、ま、不味い!!あれだけ歯磨きしたのに味がしつこく残る!!」
同時刻、かの闇の帝王ナイトメアは星の戦士カービィによって討ち滅ぼされた。
首領を失ったカスタマーサービス、デデデ大王に食わされたレバニラ炒めの不味さによろめきつつも奔走。
「くそぉ、カービィめ!!今に見ていろ、閣下は何度でも蘇るぞ!!!」
司令室から離れたデリバリーシステムで脱出を図る直前、一枚のモニターが映した異変に目をやった。
「・・・・・・・・・!?」
画面に映っていたのは、ジェネレータ室の光景。
爆発で画面が乱れる中、エネルギー体の異常な現象に気づいた。
「何だ、これは!?」
落下する天井の破片、バラバラになったパイプ。
欠片と化した物を片端から引き寄せ、取り込んでいく。
エネルギー体の表面が凸凹に膨れ上がり、膨張。
そして、表面に映し出された“それ”。
「わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
崩れ行く要塞の中、カスタマーサービスは無事に脱出に成功。
しかしその直前、彼はこの世で最もおぞましい光景を目にしてしまう。
“それ”を見た時の率直な感想は、そのまま要塞に木霊する人生最大の絶叫として発された。
プロミネンスの如く、紅い灼熱の炎煮え滾る外殻。
次々と倒れ行く建造物。
数分後、要塞は眩い閃光を発し、超新星級の大爆発を引き起こした。
爆発は衝撃波にベクトルを変え、見事逃げ遂せた3機のデスタライヤーを煽り上げる。
数多の星の煌きを残し、ナイトメア大要塞、消滅。
全てが失われた、要塞跡の宙域。
そこにぽつんと佇む、黒々しい紫の球体。
特に何かが孵化する様子でもなく、周囲に近づいた物体を所構わず引き寄せ、取り込む。
後にとある星のパイロットが目撃した後、友軍機にこう言い残して消息を絶った。
≪来るべき日が訪れた時、巨悪の魂が蘇る≫