かつて、自分らを散々ひどい目に遭わせてくれた少女シリカ。
そんな彼女はまだ手負いとの事から、城で保護することが決まった。
「まったく腹立たしいぞい!!」
「まったくでゲス。まさかあの娘を城に置いておくだなんて!!」
この決定を不服に思うのがデデデとエスカルゴン。
彼女の所為で城を破壊された回数は、ヤミカゲ再来の件を含めて2回。
本当なら賠償金をせしめたくて堪らない気分であった。
「奴は非常に凶暴な子供。親の顔が見てみたいぞい!!」
ゴルフクラブを振り回し、予習に励んでいる。
丁度パッドがエスカルゴンに命中し、顔を押さえて痛がった。
「いてて・・・・・・だったら呑気に遊んでるんじゃねえってんだよ」
「まあ待て。ワシは一つの物事に集中したい・・・・・・・・・ん?」
遠くに見える噴水を目にしたとき、デデデの頭の中で何かが閃いた。
「エスカルゴン。この国に“温泉”というものはあるかぞい?」
「へ?あるわけないでゲしょうに、こんな田舎で・・・・・・って、まさか!?」
「そのまさかぞい!!温泉を掘り当てて、プププランド唯一の温泉施設で金儲けぞい、でゃっはっはっは!」
「はあ・・・・・・・・・またろくでもない事考えるんだからよぉ、このオッサン・・・・・・・・・」
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~『温泉と火の神』~
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「デデデ、今度は何を企んでいるの?」
怪しげな機材を輸送するワドルディ達の隊列。
それを不審に思ったフームがデデデに訊いた。
「何も企んではおらん。ワシはこのプププランド初の温泉を掘り当てるのだぞい!!」
「温泉!?」
驚くフーム。
確かに、この国は地熱で暖められた源泉が存在しない。
「そうなんでゲスよ。陛下ったらまた気まぐれ起こして・・・・・・」
具合が悪そうに頭を抱えている。
相変わらず彼の気まぐれには困っているらしい。
「大丈夫ぞい!今度はエヌゼット君の援助をふんだんに受けているゆえ、成功率はワシが保障するぞい!!」
誇らしげに胸を張るデデデ。
明確な根拠は存在しなかった。
「あのねぇ、いくら優れた機材や技術が有っても、使う側が賢くなきゃどうにもならないのよ?」
「ふん、マニュアルがあるから大丈夫ぞい!!」
懐から1冊のマニュアルを取り出し、これまた自信満々に胸を張る。
会話するのが馬鹿らしくなったのか、フームは段々と呆れ顔になっていた。
「それに・・・・・・・・・天然の温泉を掘り当てるのは一筋縄じゃいかないのよ。ねえキュリオさん?」
「ま、まあ・・・・・・最新の技術を駆使しなければ、温泉を見つけるのは難しいものじゃが・・・・・・いっそ、天然の温泉を見つけてみては?」
「天然?」
「そうです。このプププランドにはギラウエア火山という休火山があることは、陛下もご存知ですな?」
「もちろんぞい!!」
自慢げに答えるデデデ。
最も、この村では知っていて当たり前だった。
「温泉は主に火山など、山のあたりで見つかることが多いのです。つまり、ギラウエア火山の近くをくまなく探せば――――――」
「見つかるのかぞい!?」
目を輝かせて訊いた。
その瞳はかなりの希望に満ち溢れている。
「もしかしたら、の話ですが・・・・・・」
「そうと決まれば兵士ども!ギラウエア火山のふもとを徹底的に調査し、源泉を探し当てるぞい!!!」
「あの、陛下・・・・・・?」
もう一つ付け加えようとしたキュリオだが、ワドルディの大群に弾き飛ばされた。
転んで腰を痛めてしまい、何も言えなかった。
「ええ?!陛下、せっかく仕入れた機材はどうするんでゲスか!?」
「エヌゼット君に返せ!!!」
「そんなぁ、せっかく大金かけて購入したっていうのにぃ!!」
「今年は200年に一度の“あれ”だから場所に気をつけて欲しいんだが・・・・・・まあ、大丈夫じゃろ・・・・・・多分」
こうして大規模な調査が行われた。
勿論、今まで誰も掘り当てなかった温泉が簡単に見つかるはずも無く、ただ時間だけが無情に過ぎていった。
「もう温泉探すの飽きたぞい、城に帰って寝たいぞい・・・」
テントの中、やる気が無さそうに寝転がるデデデ。
エスカルゴンが必死に奮い立たせようとするも、一向に無気力のままであった。
「陛下、温泉は一日にして成らずでゲスよ!しっかり!」
「もう3日も経ってるぞーい・・・・・・」
既に調査から3日が経過。
早くもデデデに飽きが回り、計画を諦めようとしていた時。
「陛下!報告です!!」
ワドルドゥが慌しくテントに入って来た。
「どうしたでゲス、ワドルドゥ隊長?」
「温泉が!天然の温泉が見つかりました!!!」
「なにぃ!?それは真か?!」
「おお!!これは確かに温泉ぞい!!」
岩肌の露出したギラウエア火山を少し登ると、ワドルディ達が呆然と目の前の光景を見続けていた。
彼らが傍観していたのは、地中より勢いよく湧き出る源泉。
辺りには湯気が立ち込め、熱気に包まれている。
願ってもいなかった奇跡に興奮する2人。
「あらまぁ、ホントに見つけたんでゲスか・・・・・・」
「エスカルゴン。試しにお前が先に入ってみろぞい」
「え!?」
「いいから入れぇ!!!」
エスカルゴンを思いっきり突き飛ばし、無理矢理温泉に入れた。
思わず溺れる素振りを見せたが、思いのほか底が浅い事にすぐ気づく。
「人使いが荒いんだから、ったく・・・・・・・・」
「どうしたぞい?」
「・・・何だか、身も心もめっちゃくちゃ癒されるような気が・・・・・・」
「なにぃ!?それは本当か?!」
ガウンを脱ぎ捨てると、颯爽と温泉に飛び込んだ。
湯飛沫が上がり、とばっちりを喰らうワドルディ達。
「うわっ、もお、市民プールじゃないんだから!陛下も疲れを癒すおつもりで?」
「ワシも最近になって虫歯が出来てしまってな・・・・・・」
「んじゃ歯医者行けよ」
助言をまるで聞かないデデデ、そのままお湯の中に顔を沈めた。
「ぶはっ!!」
数秒が経過し、顔を上げた。
「どうでゲス?虫歯治ったでゲスか?」
「・・・・・・・・・おかしいぞい。」
「やっぱ駄目じゃねえかよ」
やれやれと肩をすくめ、呆れ顔のエスカルゴン。
幾らなんでも虫歯を治す効能のある温泉なんて、世界中の何所を探しても見つかるはずが無い。
自分みたいな年寄りには、腰痛やらリウマチやら治せるだけでも十分なものだ。
己の歯の事は歯医者に任せたほうが良いに決まっている。
ロクでもない高望みをするものだ、うちの上司は。
だが、次にデデデが放った言葉は意外なものだった。
「普通ならしみるはずなのに、全然しみないぞい!!」
「ええ!?本当でゲスか?!まあ、陛下の場合は疑わしいとしても・・・・・・」
やはり、それほど信用は出来なかった。
しかしこの程度の温泉であれば、金を取っても客は納得がいくだろう。
「これなら、たくさんのお客さんが望めるであります!」
「でかしたワドルドゥ!今回は貴様ら全員に特別ボーナスをくれてやる!!」
「あ、ありがとうございます!!」
「これでプププランド一のレジャー施設が誕生ぞい!!」
「早速、今晩までに突貫工事でゲス!!!」
その夜ププビレッジでは、チャンネルDDDが総力を挙げて温泉の告知に力を注いでいた。
『チャンネルDDDよりお知らせでゲス!!』
『この度ププビレッジに、国内初の温泉が誕生したぞい!!入浴施設の名は“でで☆すぱ”!!!』
『陛下、ネーミングセンスがひどいでゲスよぉー!!』
『やかましい!!ワシの部下が見つけたんだからワシが名前をつけてもいいだろうが!!』
『とにもかくにも、この“でで☆すぱ”は室内も露天も両方完備!風呂上りにお約束のビン牛乳も販売中でゲス!卓球台もあるでゲスぞー?』
『しかも!!この温泉はどんな小さな病気や疾患にも効果があるぞい!!』
『嘘だと思うなら、入浴料一回100デデンで温泉に入るがいいでゲス!!』
『本当に効能があるのか、己の体で確かめてみるが良いぞい!!』
『お問い合わせは0120-DDD-DDD!!』
「・・・・・・己の体で~って言い回し、何かいやらしくね?」
城の一室で、リムラ達は他愛の無い会話を繰り広げている最中だった。
「そう思っているのはアンタだけだ」
「しかし温泉か~、フヒヒ」
温泉という言葉を聞いてから妙に様子がおかしい。
リムロは彼が何を考えているのか、ある程度想像がついていた。
「どしたよリムラ、連日のストレスでプッツンいっちまったか?」
「何を言っているんだリムロ!温泉と言えば、温泉と言えばな~・・・・・・」
「温泉と言えば?」
「女湯覗kっぎゃああああああああああ!!!!」
「この破廉恥ブラックボールが・・・・・・死にたいか?」
卑猥なもの、如何わしいものが大嫌いなリムロの過剰反応。
毎回犠牲となっていたリムラ、盾でダイレクトに殴り飛ばされた。
「何言ってるんだよ!?こういうのは男のロマンだろ?!」
「バカヤロウ!!女の裸体見て何がロマン・・・・・・・・・うぅ~」
段々恥ずかしくなり、縮こまってしまった。
「ふっふっふ、今この国で最も美しいのは?フームとシリカ!!」
「この野郎、なんてスケベぇなんだ!!!」
リムル、思わず口から涎を垂らす。
「こればかりは誰が止めようと無駄だぜ?世の中多少は健全なお色気が必要なのさ」
「そう思ってるのはてめぇだけだ、リムラぁーーーーーーっ!!!」
リムロが槍を構えて本気で突撃。
咄嗟に盾で防ぎ止める。
「あえて言おう!お色気は不滅だと!!!」
「だからって法に触れるような事スンナヨ!!!」
「俺の携帯カメラ付だったっけ?」
「リ ム ル !!!」
その夜、一晩中喧嘩に明け暮れたダークトリオ。
誰もが怪我の真相を尋ねたが、答えることは無かった。
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「すごい・・・・・・・・・こんなに人が集まっているなんて!」
“でで☆すぱ”の様子を見に集まったカービィ、フーム達。
誰もデデデの気まぐれには乗らないだろうと思っていただけに、予想以上の行列に驚いた。
「とりあえず、並びましょう」
入らないうちからウダウダ言っても始まらない。
温泉の真偽を確かめるべく、行列に並ぶ事にした。
「でゃははは、ようこそ“でで☆すぱ”へ!!」
玄関に入るなり、デデデの暑苦しい顔が迫る。
珍しく二人とも半被を羽織っており、その格好は妙にマッチしている。
温泉旅館を意識した雰囲気合わせだろうか。
「今ならお一人たったの100デデン!!でもお前らは大臣の子供でゲスから、一応タダにしといてやるでゲス!」
「後カービィも今回だけは特別にタダぞい!(どうせ金持っておらんくせに・・・)」
「ぽよー!!」
「そう?だったらお言葉に甘えて入らせてもらうわ」
「俺も~」
「私も・・・・・・って、そこどいてくれない?」
デデデとエスカルゴンに行く手を塞がれ、不快になったシリカ。
瞬時に改造銃を突きつけた。
「お、落ち着くでゲスよ!!お前は入浴料を払えでゲス!」
「なんで?」
「お前は大臣の子供じゃないからでゲス!!」
「お金持ってない」
「ならば力ずくでお引取り――――――」
「「熱いいいいいいいいい!!!!」」
「「真っ黒こげ~」」
火炎放射器で黒こげにされた二人、そのまま前のめりに倒れた。
「後でお金払えばいいんでしょ」
何事も無かったかのように踏みつけ、通り過ぎて行った。
「だ、だが・・・・・・・・・お前らが入れるのはだいぶ後の事になるぞい・・・・・・」
「えー!!こんなに混んでるなんて!」
「着替え入れのカゴがどこも空いてねぇよー!!」
「あーもー!!!」
「もう、人民共でごった返しておるからな・・・!」
何ともみみっちい復讐であった。
「何じゃ、お前さんもずいぶん元気そうに見えるのう。」
「すごいだろ、キュリオさん?みんな怪我とか疾患とかどんどん治ってるんだぜ?」
キュリオは温泉に入った者達の感想を聞いて回っていた所だった。
「うーむ・・・・・・本当に効能があるのか、温泉客から手当たり次第に聞いていったが、どうも本当のようじゃな・・・」
「でもキュリオさん、何でそんな事してるんだい?」
「いや、少し不安な事があってな・・・・・・」
「不安?そう言えば、近くにフクロウみたいな石像があったっけなぁ・・・・・・」
「何ぃ!?」
タゴの胸倉を掴み、凄い形相で問い質す。
「それは本当か!?」
「ほ、本当だよ・・・なんだかタヌキみたいな尻尾が生えた変なフクロウでさ・・・・・」
「陛下もあんなトコロで商売して、祟られやしないか心配だよ」
「こ、これは大変じゃあ!!!」
胸倉を突き放すと、猛ダッシュで駆けていった。
「早く陛下を止めないとぉぉぉぉぉ!!!」
「こっから温泉までかなり距離あるんだけどなー。キュリオさん大丈夫かなぁ・・・・・・」
その夜、でで☆すぱ女湯の露天風呂。
下心を持った一人の男の為だけに、残る2人は竹壁の裏側で待機する事となった。
「リムラ・・・・・・本当にやる気か?」
「当たり前だろ!一度だけでも拝んでおかねぇとなあ、うへへへへへへへ」
「駄目だコイツ・・・・・・早くなんとかしないと・・・・・・・・・ていうか俺ら何で男湯入らないのん?疲れ癒そうぜ」
「えー。別に今日限りって訳じゃないんだし、明日にでも入ろうや」
「おっと、来たぜ!!」
(あっという間に人がいなくなっちゃったね、フーム)
(むしろこの方が静かでいいんじゃない?)
「やべぇ本命来ちゃったよどうしよううへえうへへへ」
「うるさいよ」
「リムロ、お前壁の上から確かめてこい!」
「無理だって!体が真っ黒いからバレバレ」
「ならばキリで穴を開けるしかあるまい・・・・・・」
(ぽーよ、よーゆい!)
「「「!?」」」
驚愕する3人。
本来聞こえるはずの無い声が、明らかに女湯の中から聞こえた。
(ふふ、カービィったら気持ちよさそうね。でも一緒に入って大丈夫なの?)
(まだ幼いからいいんじゃないの?同じ球体でも、リムラみたいな奴と一緒に入るのは御免だわ!)
「あ の ガ キ !!!!」
羨ましい思いと同時に強大な嫉妬心を覗かせるリムラ。
「こりゃ驚いた、カービィまで居るとは・・・・・・」
「どうだリムロ、穴開いたか?」
「無理。この壁硬いんだ畜生が」
「じゃあ上から覗くしかないってか・・・・・・」
((・・・・・・何で必死になってるんだろ、俺ら・・・・・・))
(ねえシリカ。さっきから何でバスタオル体に巻いているの?)
「・・・・・・うわ、テンション下がった」
一気に妄想が萎縮し、気力を失くすリムラ。
「体覆う面積の多いバスタオルかよ、畜生・・・・・・」
「分かったろ?こういう事する暇あるなら別の事に時間を割こうって話――――――」
(だ、だって・・・・・・・・・まだ傷が癒えてないから、見えたら気持ち悪いと思って・・・・・・)
(そんなの気にしないわよ。それにこの温泉、何でも癒す効能があるらしいから、今頃とっくに直ってるわよ!)
(本当かな・・・・・・・・・・・・そう言うフームはどうなの?バスタオル剥がしてあげようか?)
(ええっ!?)
「キターーーーーーーーー!!!」
「落ち着け!静かにしろ!」
一方、隣の男湯露天風呂。
ブンも考えていることは同じだった。
「・・・・・・ゴクリ・・・・・・・・・・・・・・・!」
木の板で仕切られた壁に耳を当て、フーム達のはしゃぐ様を聞いているうちに妄想が止まらなくなった。
「いいなぁ、カービィの奴!!せめて混浴だったらいいのに・・・・・・」
勿論ブンは気づかない。
明らかな下心で姉を覗こうとする、不埒な輩の存在を。
「うひいいいいい俺も査定してぇよおおおおおおお」
(駄目だコイツ・・・・・・本気でなんとかしないと・・・・・・・・・)
リムロは本気で、リムラの変態ぶりに頭を抱えていた。
リアル目のダークマター族は本来、殆どが現実主義思考の持ち主。
従って、リムラのような煩悩の塊の存在は稀。
いっそ女湯に放り込み、自分達だけ逃げようかとも考えた。
「・・・・・・・・・?」
リムルが何かに気づいた。
「どした?夜空なんか見上げて。」
「・・・・・・なんか、飛んでくるんすけど・・・・・・・・・」
空を見上げると、遠くの山の向こうより“何か”が飛来して来るのが目に見えた。
「何だアレ?フクロウ?でもタヌキの尻尾あるから何とも言えないな・・・・・・・・・」
でで☆すぱのカウンターでは、キュリオが必死に訴えていた。
「何ぞいキュリオ!!今日はカービィ達が出たら、もう閉店ぞい!!」
「では・・・カービィ達を・・・・ぜぇ・・・・・追い出して、すぐに・・・この・・・ぜぇ・・・・・・建物を、取り壊して下さい!!!」
長い距離を全力で走ったため、さすがに息切れを起こす。
「馬鹿言うなでゲス!!せっかく大もうけできるのに!!」
「この温泉は、我々が入ってはいけない温泉だったんです!!その証拠に、これをご覧下さい!!」
手に持った古文書を開き、あるページの絵をデデデに見せた。
「・・・・・・・・・?このタヌキみたいなフクロウは何でゲスか?」
変な姿の鳥を指差し、訊ねる。
「これは炎の神と崇められた怪鳥“ボーボー”なのです!!!」
「「ボーボー?」」
2人は顔を見合わせる。
「陛下。この温泉に浸かったとき、何か感じませんでしたか?」
「うーん、そういえばワシの虫歯が和らいだり、エスカルゴンの腰痛が治ったり、あとは人民共にも色々効能が・・・・・・」
「それです!!」
「それって?」
「この温泉はどんな傷も忽ち治す効能があるのです!」
「じゃあ何ぞい、ここはボーボーも浸かりにやってくる温泉か?」
「そうです。この鳥は傷つくと、ギラウエア火山の何所かで200年に一度湧き上がる温泉に、こっそり浸かりに来るのです」
「それがどうした!!今はワシの温泉ぞい!そんなフクロウだかタヌキだか分からない奴は追い出してくれるぞい!!」
「なりません、陛下!!」
キュリオは次のページをめくって見せた。
「「!?」」
驚愕する二人。
そこに描かれたのは、ボーボーらしき鳥がキャピィ族と思しき男を火口に放り投げている絵。
「この歴史書によれば2000年前、温泉を独占したあるキャピィ族の男がボーボーの怒りを買い、火口に放り込まれたのです!!」
「何だと!!?」
「しかもボーボーの怒りは収まらず、その影響でギラウエア火山が三日三晩噴火し続けたのです!!」
「ゲぇ!?!?」
「空は噴煙で覆われ、2、300年もの間プププランドは氷河期に見舞われたとの事です!!!」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!」」
顔を見合わせ、頷く。
今の話を聞いた以上、二人がすべき事はただ一つ。
何が何でもこの建物を打ち壊すしかない。
「陛下、今ならまだ間に合います!一刻も早く、温泉を―――――――――!!!」
ギラウエア火山上空。
狸の尾を持つ業火の怪鳥が、そこまで迫っていた。