ホロビタスター。
遥か昔に文明が滅び、砂漠のみが残された星。
緑の存在する場所は極僅かで、殆ど雨も降らず、普通に生活する事すら非常に厳しい。
このような環境の土地が延々と続くのだから、惑星全体が不毛の土地と言ってもいい。
「ふう、今日も大収穫ですね」
そんな過酷な所でありながら、奇妙な形のロボットを駆り砂漠を疾走するダークマターの男が一人。
大量の古びたガラクタをロボットに背負わせ、絶妙なバランス感覚を保っていた。
「これでまた、私ことマター少佐のアンティークコレクションの棚が埋まっていく訳ですが」
マター少佐と名乗る男は地図を取り出し、目的地に向けて進路を取る。
ディガルト帝国軍のナンバー3、それがマター少佐。
嫌味な性格を除けば、至ってまともな軍人。
彼は今、「アンティーク」なるものを収集する趣味に没頭していた。
このホロビタスターには、「旧時代」と呼ばれる古き時代に存在した遺物が眠っている。
それも数え切れないほど、大量に。
「旧時代」が未だに解明されていない未知の領域だけあって、特に少佐のいる土地は絶好の発掘対象となるはずだった。
しかし、太陽の照り付ける過酷な環境下での作業は極めて難しく、熱中症で倒れる者が続出。
更に凶暴な原生動物も闊歩しているのだから堪ったものではない。
結局、殆どの考古学者が調査を断念。
「旧時代」の解明は一歩たりとも進まなかった。
それを良い事に、少佐は一人で回収を始めた。
名声を得るためでも無い、質に入れて金を稼ぐためでも無い。
ただの「趣味」。
独占する理由がこのようなものでは、学者達も激怒するだろう。
だが、少佐は気にも留めない。
学者達を「無能」と見下した彼にとって、真面目に聞き入れるに値しない言葉であるからだ。
歴史の解明に命を賭せぬ者の批判など、痛くも痒くも無い。
それが彼の持論。
現に少佐は、趣味のためだけに本格的な準備まで済ませている。
長期単独キャンプ用のグッズを持ち込み、仮に遭難しても持ち堪えられるよう備えを欠かさない。
当人いわく、「馬鹿学者でも無いのに、ここまで周到にやるのは自分だけ」。
「おや、連絡が・・・・・・」
兜の中に仕舞った携帯通信機のバイブレーション機能が働き、着信を知らせた。
軽く頭を振って取り出し、応答。
「誰ですか?私は有給休暇を取っているので仕事の話は・・・」
『アホかぁ!!どこで油を売っているのか知らんが、さっさと戻ってこい!!』
音割れしそうなほど大きな怒鳴り声をぶつけられ、不愉快になる少佐。
声の主の正体などたかが知れていた。
「煩いんですよ、この石頭!!そんな馬鹿みたいにデカイ声出さなくても聞こえますよ!!」
『黙れ!こちとら非常事態だぞ!?』
「非常事態ぃ?中佐殿、一体何が・・・・・・」
『例の任務に出撃したHR-Cが、先程帰還した。だが・・・・・・破損が酷い』
「!!」
ようやく、中佐が言わんとしている事が理解できた。
帝国最強の戦闘マシン、HR-Cの敗北。