8:オチョ

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
「軍の奴らは何をやっているんだ!?」
「何にせよ助けが来るまで生き延びるしかねぇな、ファーナー!」
「良いだろう、どっちが最後まで生き残るか勝負だ!先に死んだら許さないからな!!!」
 
 
樹海は地獄絵図だった。
昼間はプテラン、クロウカース、プロペラーといった空の狩人達が地上に目を光らせ、獲物を探す。
夜間は鼻の利く獣が森を闊歩し、やはり獲物を捜し求める。
一分一秒たりとも、安らげる時が無い状況を想像することは難くなかった。
訓練生らは顔を洗う時、食事中、用を済ませる時など、あらゆる行動の中でも“音”に聞き耳を立てねばならない。
経緯は異なれど、些細な気の緩みが死に直結するためだ。
 
 
「何だ、レイゾウか・・・・・・見つからないうちに退散だ!」
 
 
鈍重な大型魔獣なら、助かる見込みはある程度残されている。
しかし、ガウガウのように俊敏な敵に見つけられたら最後と言っていい。
人の脚力では幾ら足掻いても、絶対に逃げ切れないためだ。
追いつかれれば鋭い牙が肉に抉り込み、骨の髄までしゃぶられる事となる。
 
ストルトスは幾度も、彼らの悲惨な最期を目の当りにしてきた。
時には自責の念に駆られ、錯乱しかけた事もある。
 
その度に彼は、プリズナーがミッション初日に吐いた汚い演説の中で、一番印象に残った言葉を思い出していた。
 
 
 
『所詮戦場は弱肉強食!!どうしても仲間を助けたければ、己の力量を弁えてからにしろ!!!
 
 
 
 
誰かを救いたいのなら、自分の力と相談してからにしておけ。
プリズナーが言わんとしている事は、正にそういう事だった。
 
期間中、ストルトスは幾度となく自分に言い聞かせることで正気を保った。
戦場は弱肉強食。
下手な助太刀は足を引っ張られ、自分も死ぬだけだと。
初めて現実の惨さを思い知らされた彼は、明らかに助かる見込みの無い訓練生は見殺しにしてきた。
それが生き残るためには、最善の選択だから。
 
 
 
 
 
 
「チッ・・・・・・!」
「ヴァルキーナ!!」
「大丈夫だ、トラバサミ程度は何て事ない」
「強がるなっての、血ぃ出てるぞ!」
 
 
樹海の其処かしこには、対人向けのブービートラップが張り巡らされている。
仕掛けたのは勿論、プリズナーをおいて他に居ない。
 
「クソッ、プテランに気づかれたか!」
「馬鹿、飛ぶなヴァルキーナ!冷静に考えて、此処は逃げるべきだ!」
「放せ、この変態!!」
 
 
一度でも出血するのは最も危険で、血の匂いが他の魔獣達を誘き寄せてしまう。
そういう意味で、トラップは樹海の厄介者だ。
このような事態を想定していない上で設置されているのだから、尚更性質が悪い。
 
 
そして、戦争史上最悪とも言える対人兵器が、樹海に身を潜めていた。
 
 
 
 
 
「・・・・・・ファーナー!?」
 
 
非道なる爆殺兵器、地雷。
 
 
今回、地雷に限ってはプリズナーの考えたものではない。
敵方に居たのだ、悪魔のトラップを生成する能力の持ち主が。
しかし、その魔獣はどうも知能が低いようであった。
地雷は地面に埋め込まれる訳でもなく、つまり無造作に地面の上に設置されている。
これでは敵も味方も気づくのは簡単だが、何らかの要因で注意力が散漫となったか、あるいは不可抗力ならば決してこの限りではない。
 
 
「お前っ・・・・・・こんな!!」
「ハァ・・・見くびるなよ、ストルトス・・・・・・ハァ・・・右足ぐらい、どうって事・・・・・・!」
 
 
ファーナーは後者だった。
爆発に見舞われる数分前は、とある魔獣と繰り広げる死闘の真っ最中。
上空より落下し、獲物を包み込んで捕食する魔獣ペララ。
後に退かないタイプのファーナーはストルトスに自慢したいがため、わざわざ自分から戦いを挑んだ。
 
死角とも言える平べったい身体の上に乗り込み、一方的に攻撃。
だがペララの急上昇に足を取られ、思わず飛び降りてしまう。
体勢を直し、足先から無事に着地したまでは良かった。
 
 
 
“何かの作動する音”が聞こえるまでは。
 
 
 
不審な音に足元を見やるが、時既に遅し。
ファーナーの右足が踏みしめていたのは、フリスビー程の大きさをした円形の金属板。
それを視認できた次の瞬間、彼の身体は宙を舞っていたという。
 
 
「どうだ・・・・・・?」
「これはひどい。他は回復できても、コイツの右足はもう使い物にならない」
 
 
ファーナーやストルトスだけでなく、この年の訓練生は幸運だった。
エンジェルス族のヴァルキーナは生まれながらにして、生き物の受けた傷を癒す治癒能力を有している。
ストルトスは彼女と合流して以来、積極的に他の生存者を助けるようになった。
味方が多ければ怖いもの無しというもの有るが、実際は治癒能力の存在が大きい。
 
「冷たいコト言うねぇ」
「事実だ」
 
 
ヴァルキーナが本格的に目覚めたのは、孤児院に入って一ヵ月後。
自分より幼い子供が転んで怪我したのを見兼ね、応急手当をした時に不思議な現象が起きた。
子供の傷がいつの間にか治っている。
救急箱を手に戻ってきた
最初は戸惑うヴァルキーナだったが、次第に己の能力について自覚を持つようになった。
致命的な欠点である、「自分自身は治せない」という事も。
 
「何故かプリズナーのババァの顔が思い浮かんできたぜ・・・・・・あいつ、俺に“マッドボール(泥団子)”なんて名前つけやがって」
「私は“醜いアヒル”と言われた」
「俺は“エース”。何でだろうな」
 
彼女は天使を思わせる容姿に反し、中身は父親仕込みのスパルタ教育で出来上がった冷徹な戦士。
それゆえ発する言葉も厳しいもので、思いやりの欠片も感じられない。
しかし息も絶え絶えだった訓練生にとって、彼女の姿は戦場の女神のように見えたという。
死にかけの所を救われたのだから、そう思うのは当たり前かも知れないが。
 
 
平然と冷めた態度を取るヴァルキーナは、ストルトスが最も苦手とするタイプの女性でもあった。
ただ二人にも共通する所があり、不利な状況を省みず立ち向かおうとする熱い心が挙げられる。
それゆえか何だかんだと馬が合う事も少なくないのだが、両者ともその事実を頑なに認めようとはしない。
 
「ストルトス。つまらない事故で怪我なんか負うなよ」
「うるせぇな、ヴァルキーナ。お前に面倒みられるほど弱くは無いさ」
 
後に自分も彼女の世話になろうとは、この時ストルトスは微塵も考えていなかった。
 
 
 
 
本来のサバイバルミッション終了まで5日を切った日の事。
 
 
ナイトメア軍は満を持して、ある凶悪な魔獣を投入した。
製造当時、操縦者を必要としないことから最新テクノロジーの塊とも言われた、“メカ魔獣“ヘビーロブスター。
魔獣でもあり、意思を持った機械でもある生命体。
それがメカ魔獣。
「TEAM H-TYPE」なる、ナイトメア軍お抱えの技術者集団は此れの派生・類似機を幾多も生み出していた。
 
 
今回ストルトス達の前に現れたのは、ヘビーロブスター達の原点でもある通称「シザーヘッド」。
圧倒的出力の火炎放射で、全てを焼き尽くす悪魔の鋼鉄海老。
後継機に比べると様々な面で見劣りするらしいが、実際に出くわす者にとって然したる問題ではない。
極めて高い殺傷能力を有している時点で、十分脅威足りえているのだ。
 
 
敵方にとっては幾多もの戦績を挙げてきた“英雄”だけあって、ストルトス達は大いに苦戦させられた。
潜った修羅場の数だけ刻まれた、傷だらけの装甲は生半可な打撃を受け付けない。
正面に立てば火炎放射に曝され、木陰に隠れても木そのものが一瞬で灰と化す。
接近戦を挑めば、巨大な鋏が容赦なく叩き潰しに来る。
まさに、死角の突きどころが無い強敵。
 
 
 
だが不幸は続く。
思いのほか敵数の減らない現状に、ナイトメアも業を煮やしていたのだろう。
シザーヘッドだけでなく、知らぬ者は居ない最強魔獣マッシャーまで遣して来たのだ。
最強の魔獣に、最強の殺戮兵器。
当時プリズナーですら2体の同時投入を知らされ、身震いした程と言われた戦慄の極悪タッグ。
その日からサバイバルミッションは、遂に本物の地獄と化した。
 
 
 
 
「・・・う・・・・・・!!」
 
 
翌日以降、散見されるようになった轢死体・焼死体の数々。
暴力的作用が公平に叩き潰し、無慈悲な劫火が分け隔てなく炭へ回帰させていく。
人も、木も、あまつさえ同胞であるはずの魔獣までも。
身を隠せる場所が失われるにつれ、生存確率は低下の一方を辿った。
 
 
同族、外部を含め5000人程が参加した訓練生のうち、25日経過の時点で既に凡そ300人が死亡。
犠牲者の数を抑えられたのはストルトスらの尽力や、授業で学んだ「生き抜くための知識」の賜物と言えるだろう。
しかし、シザーヘッドら増援の到着後は一変。
たった1日の間で1000人もの人命が奪われるという、ただならぬ最悪の事態へと発展。
 
 
重く見た双方の軍部は、直ちにサバイバルミッションの中止を求めたうえで即刻増援を検討。
だがプリズナーは命令に背き、孤立無援の状態を貫いた。
絶望的状況より無事に生還するであろう、本物の戦士の誕生を期待していたのだ。
それこそ悲劇の責任を問われ、己に処分が下されることになろうとも。
 
 
 
 
「ちぃっ・・・!!」
 
上層部に渦巻く駆け引きなどつゆ知らず、死に物狂いで彼らは足掻く。
木々が取り払われ、焼け野原となりつつある樹海を、とうとう300人まで減った生き残り達と共に駆け抜ける。
まだ被害の及ばない地域へと逃げ込み、この世の地獄からの脱出を試みていた。
サバイバルミッション最終日の事である。
 
 
残念ながら、大半の者は生きて帰れなかった。
彼らを嘲笑うかのように、森を焼くことで退路を断つシザーヘッド。
マッシャーは逃げ惑う虫けら達に追い討ちをかけ、自慢の鉄球で片端から新鮮な挽き肉に仕立て上げる。
逃げ場を失い、次々と挽かれ焼かれる生き残り。
血と肉の焦げた悪臭が漂い、残された者達は戦意を削がれ、一人、また一人と犠牲が増えていく。
そして。
 
 
 
「冗談じゃねえな、ファーナー!!」
「全くだ、ストルトス!!」
「このヴァルキーナ、蛮獣ごときに臆する程度の天使ではない!!」
 
 
最終的に生き残ったのは、この3人だけだった。
 
 
ファーナーは何時でも、ストルトスに対して負けず嫌いの傾向がある。
だから地雷で右足を失おうと、決して強気の姿勢を崩さなかった。
ヴァルキーナも似たようなもので、誰が相手であろうと“逃げる”という選択肢は、彼女の頭の中に無い。
ストルトスはクセの強い彼らと強調する気は無く、どちらかと言えば冷静さよりも無鉄砲ぶりが光る。
 
性格からして全く噛み合わない3人だが、強敵に立ち向かうという意志は同じだった。
持ち前の傲慢でファーナーが敵を引きつけ、ヴァルキーナは空中を自在に立ち回って翻弄し、ストルトスが攻めの一撃を加えていく。
ワンマンプレーのつもりでもそれは、彼らだからこそ出来る高度な連携以外の何者でもない。
 
 
 
だが、この戦いで更なる悲劇が訪れた。
 
 
 
「ざまあねぇな、海老もどき!!」
 
 
まだ血の気の多かったストルトスは、常に攻め続けてこそ最強という持論を信じて疑わなかった。
臆することなく敵の懐に突っ込める彼の度胸は、言い換えれば無謀で観察力に乏しい。
更に勉学に対する消極的態度が、結果的に彼を破滅へと導きかける。
 
 
「うわぁっ!!?」
 
 
訓練プログラム中の授業をまともに聞かなかったのが、大きな仇となった。
ヘビーロブスター系統が得意とする攻撃は、当然ながら火炎放射だけでない。
液体爆雷という彼ら特有の兵装で、「ペイントスライム」とも呼ばれるゲル状の液体が身体の自由を奪う。
それだけでなく強力な発火性も有しており、外部から刺激を加える事でも爆発する性質があった。
 
「馬鹿、うかつに近づくなとあれほど言ったのに!!」
 
知らないだけでなく、攻撃に夢中で何も目に入らなかったストルトスは、諸にペイントスライムを喰らってしまった。
取り付いた部分は彼の右腕で、幾ら振りほどいても離れようとしない。
そこへシザーヘッドの突き飛ばしが直撃し、仰向けに倒れる。
 
地面にペイントスライムが接着し、動かない右腕。
必死にもがき、逃げようとする。
更に放たれた、シザーヘッドを模した小型の自走爆弾。
やがて自身の右手方向を中心に周囲が暗くなり、ストルトスは空を仰いだ。
落下してきたのは、巨大な鉄球。
 
 
 
 
 
 
落ちた先は、彼の右腕。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
________
 
 
 
「・・・・・・・・・・・・!!!」
 
絶句するガールード。
ガントレットと彼の顔を交互に見やり、ようやく事を理解した。
 
「びっくりしたろ?」
「・・・・・・ええ」
「あの後、俺達3人は命辛々逃げ延びることに成功。軍からは活躍を称えられ、高い地位の椅子が授けられた。
プリズナーは大量の訓練生を死なせた責任を問われ、左遷された。でも、この話には続きがある」
 
一呼吸置いて、再び話し始めた。
 
 
「あの日は、俺達が変わってしまった日でもあった。まず全員に共通するのは皆、初めて血に汚れた事。俺も例外じゃない。
俺は右腕を義腕と取り替えた。・・・・・・右手をコレに改造した事を除けば。正直、俺の意思じゃなかった。
ヴァルキーナは初めて、「逃げる」という選択肢を自分のアタマん中に入れた。俺がこうなった事に対して負い目を感じているようにも見えた。
メンツの中で一番悲惨なのがファーナーだった。最後の戦いで下半身までやられちまった挙句、二度と戦えない身体だと医者に言われて以来自暴自棄となった。
暫くの間、自分に適した本当の戦い方を見つける旅に出た。様々な星を巡り歩き、こうでも無い、ああでも無いと試行錯誤を重ねた。
そして俺は、とある情熱的な国を訪れた時に出会った。マタドール、つまり闘牛士に」
「それが、今の貴方の原点?」
「そうさ。マタドールは闘牛を挑発し、突進を華麗に避けてみせる。そんな戦い方に俺は痺れ、憧れた。
驚いた事にその国では、兼ボクサーでもある有名なマタドールが活躍していたと聞いて益々興味を持った。
確か、ドン・・・・・・ドン・何つったかな?とにかく俺は弟子入りを志願し、毎日修行に明け暮れた。
ドンは見ず知らずの、しかも右手の怖い俺にマタドールの技術・作法をイチから教えてくれた、素晴らしきマエストロ(達人)。もう感動を隠せなかったね。
予定していた1年という期間は大幅に狂い、なんと無断で5年も長期滞在!これにはゼロ元帥もお冠さ」
 
ポケットから取り出した布で爪を拭き、入念に手入れ。
先程までの真剣な語り口は何所へやら、いつものストルトスらしい喋りに戻った。
 
「ま、ドンのおかげで今の俺が此処にあるって訳なんだけどな。オーレ♪」
「・・・所々で異国の言葉を挟むのも、ドンの影響かしら?」
「んー、ま、そんなトコかな。よっと」
 
徐に立ち上がり、肩慣らしを始める。
 
「・・・なあ、マーレ」
「?」
「敵の兵隊を混乱させるには、どうするのが一番だと思う?」
「・・・・・・元締めを倒す?」
「そう。コロネル(隊長)の首を討ち取れば良い。気をつけろよ、ウチの軍は血の気多い連中で一杯だからな。おたくが狙われても不思議じゃないと思うぜ」
「忠告どうもありがとう。けど心配には及ばないわ」
「ホントかぁ?ま、自分の身も案じておくに越した事は無いぜ・・・これから独り寂しくメギロポリスに行くぜ、じゃあな」
 
 
背を向けたまま片手を上げ、歩いて去っていった。
傷だらけの兜が夕陽に反射しているのを見たガールードは、大分時間が経過していた事に気づく。
 
「・・・そろそろ私も帰ろうかしら」
 
ストルトスの昔話は思った以上に長かった。
明日に備え、早めに準備をしなければ。
遅くなる前に王宮へ戻ろうと、駆け足気味に走るところを陽気な声が引き止める。
 
 
「ヘイ、ヘイ、ヘーイ!」
 
 
道化師と似た口調に、思わず振り返ったガールード。
しかし声の主は予想と若干違う、黒いフードを被った魔法使いのような格好。
 
 
「あなた・・・最近この街で見かける道化師と知り合い?」
「いや、ぼくちんはただの占い師さ。開業サービスで今なら無料だけと、どうする?きみの未来を占ってみる?」
 
紅い高価な布で覆われた台。
その上に鎮座する水晶球。
見るからに胡散臭い。
個人的に占い師の類はあまり信用しないのだが、一度くらいは良いかも知れないと考え、頼んでみた。
 
「・・・・・・・・・じゃあ、占ってもらおうかしら」
「分かったよ。ちょっと待っていてね・・・」
 
すると突然ローブを脱ぎ捨て、取り出した箒を片手で高速回転させ始める。
奇抜なダンスを踊りながら奇怪な呪文を呟くその姿は、人々の視線を集めるには十分だった。
 
「何だ、何だ?」
「いつもの道化師と違うけど、誰?」
「占い師だってさ。俺もさっき占ってもらったよ」
「あそこに戦士団長殿がおられるという事は、やはり占い師の噂を聞きつけて?」
 
 
パフォーマンスは続き、激しさを増していく。
そして締めくくりに箒でガールードを指し、最後の呪文を叫んだ。
 
 
 
 
ガールー・ナメニア・ギラレタ・カラウラ・リヒサン・ドハコレ・ウンダゼェェェェェ!!
 
 
 
 
 
やる事を終え、何事も無かったかのようにローブを羽織り直して着席。
最初から水晶球は必要なかったのでは、と突っ込みたい密かな気持ちを抑え、大人しく結果に聞き耳を立てる。
 
 
「・・・・・・罠にご注意を」
 
 
罠に?
恐らくそれは元老院の十八番だが、もう彼らは居ない。
他に罠を仕掛ける者として考えられるのは、逆恨みしている一部の貴族や商人ぐらいか。
 
 
「あとは裏切り」
「・・・・・・ご忠告どうもありがとう」
「いえいえ、善意でやったまでの事。それでは、ごきげんよう」
 
その発言が余計に怪しい。
ともあれ、改めて身を引き締めるには良い経験だった。
 
今度こそ王宮へ帰路を戻し、明日に備えよう。
 
 
 
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「・・・どうでしたか、師匠?」
「完璧サ。いずれ占い通りになって吠え面かく事になるのサ」
「フフフ、明日が楽しみですね!」
「後は色々やっておきたい事もあるけど、今はどうでもいいサ。野となれ山となれだ!」