トゥエルブス

 

 

 

 

 
 
 
ソルジャーズ・バーストの大破を受け、新たに本星よりプププランドに遣された帝国軍の大型輸送船。
ずらりと並んだ対空砲が、輸送船らしからぬ物々しさを生む。
あの戦艦ハルバードにも匹敵する体躯も、今回モノがモノだけに、取り扱いは厳重に行わなければならないという事を同時に示しているようだった。
 
その後、カービィ、フーム、ブン、メタナイト卿ら一行の立会いの下で、オボロヅキの積み込みを決行。
サーチマターは軍が許可を下さなかった為、村に滞在する事にしたらしい。
オボロヅキは氷漬けと言えど、万が一中佐のように精神干渉を受けては困るため、輸送船に常備された大型クレーンが用いられた。
結果、何事もなくオボロヅキ搬入が完了。
 
離陸を控えた船内では搭乗員の帝国兵大多数に紛れ、カービィ達も固唾を呑んで見守る中、魔刀は大佐の手で超合金製のケースに収められた。
場に居る者達すべてが、この瞬間で生き証人となったのである。
 
 
 
「――諸君。かくて害悪たるBBBの幹部一人が討たれ、魔刀も封じられた。長きに渡る膠着状態から、ようやく我々はBBB撲滅への第1歩を踏み出したのだ」
「・・・よく言うわ。カービィの助けなしでは勝てなかったくせに」
 
演説口調の大佐に対し、フームは小声で悪態を突いた。
我々、にカービィ達も含まれているなら別に文句は無いのだが、現在の彼女の不満は其処ではない。
異能揃いの特殊部隊を抱えていながら、わざわざ自分達にまで同行を要請した事が解せないのだった。
 
「姉ちゃん、今はいいじゃんそんな事」
「・・・何事も起きなければいいけど・・・デデデ達はいないし、残ったパパ達も心配だわ」
 
もう一つの問題はリボンの事だった。
残念ながら戦力抜きでも、この先待ち受けるであろう戦いの過酷さから同行させることが出来ず、パーム夫妻に預けられたのが現状である。
ソードとブレイドが控えているとはいえ、留守中に襲われたらひとたまりも無い。
 
「なんとかなるって」
「パーム殿はああ見えて強かだ。心配あるまい」
「ぽよ!」
「そうかしら・・・」
「――――であるからにして、我々はこれを足掛かりとし、打倒BBBへ向けて本腰を入れていこうではないか。私からは以上だ」
 
出航前のスピーチを終え、大佐が一歩後ろへ下がる。
続いて、格式の高い帝国兵が入れ替わりに前へと出た。
 
「本船は只今を以って出航する。航路へ入った後は各自持ち場につけ。カービィ一行と中佐殿は特別保管室の警護へ。連絡事項は以上だ。では少佐殿」
「ええ。それでは我等が故郷に向けて、発進せよ!!!」
 
 
少佐は艦内放送用のマイクを手に取り、高らかに号令を上げた。
船内が一瞬揺れた後、宇宙空間へ向けて徐々に高度を上昇させていく。
 
程無くして、輸送船は大気圏を突破。
カービィ達にとって宇宙への進出はこれが二度目となる。
何処かで重力装置でも働いているのだろうか、普段より体が身軽に感じられるものの、それ以外については日常生活とさして変わらぬ感覚であった。
 
「・・・で、まさかこの乗り移られた情けな~いヤツと一緒に守るの?」
「じゃかあしい!!俺だって好きで操られたわけでは・・・」
「でもさー、いわくつきの刀をなんにも警戒せずに握ったのもどうかと思うよな!」
「うう・・・・・・」
「言われっぱなしだな」
「うるせいやい。ほら、保管室行くぞ!!」
 
ポップスターでの失態をなじられ不機嫌な中佐は、黙ってカービィ達の前を先導。
事実、彼のせいで危うくオボロヅキの暴走を許しかけたのだから世話もない
 
 
「・・・・・・ねぇ」
「何だ」
 
 
「・・・本当に、ジョーとシリカが、あなた達の指導者を手にかけたの?」
 
 
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・はっきり言うわ。このディガルト帝国、私の目から見てアヤシサ満載よ。もともと帝国とは無関係なあの二人が、何の間違いで暗殺なんか」
「・・・俺もだ」
「ぽよ?」
「俺も正直なところ、あいつらにそんな大それた事が出来るはず無いと思っている。俺達は宇宙最強の軍隊を自負する以上、指導者も強くなきゃダメだ」
「どういう事だ?」
「力こそ全てっつうのは、内部にも言える事なんだよ。昔っから帝国の憲法には、皇帝のやり方が気にくわなきゃ謀反起こしてもOKと書いてある」
「とんでもない国ね・・・・・・」
「だが、ゼロツー皇帝はここ数千年も玉座を守り続けた。理由は言わずもがなさ」
「・・・それも何だか疑わしいわね。いくら優れた指導者であっても・・・」
「ただ分かっているのは、皇帝と兄者が最近この頃、決して良い関係ではなかったって事だけだ・・・・・・この話したって事、兄者には内緒な」
「私だってそこまで陰険じゃないわ」
「ぽよ」
「・・・助かる」
 
 
そして切りの良いところで、目的の特別保管室の前に到着した。
自分達以外の者に聞かれていなかったか辺りを見回しながら、中佐は何所からか小型のカードキーを取り出す。
搬入口の傍に取り付けられたカードリーダーに通すと、金属製の重い扉が徐々に開放されていく。
 
「でっけぇ・・・・・・」
「これぐらいで驚くなってんだ、田舎モノめ。普通の倉庫はもっとでかいぞ」
「あれがさっきの箱ね」
 
デデデ城屋上と同等の広さを持つ空間の中心には、先程見届けたボックスが何重もの電磁バリアーに守られていた。
このバリアー以外には、特段目立つような迎撃装置は見当たらなかった。
その代わり、宙に浮かんだ数々のホログラム式モニターで室内からでも常に船内全体の様子を見渡すことが出来るようになっており、さながら司令室である。
 
「カードキーが無いとこの部屋にはどう足掻いても入れない。けど今回は敵が敵だからな。万が一に備えてお前達へも要請したって訳だ」
「迷惑な話だわ。あなた達には特殊部隊がいるんじゃないの?」
「確かにそうだな。我々には無い能力を持っているはずだが・・・」
「・・・変人ばっかなんだよ!ネクロスは気まぐれ、プラントは超絶的に寝起きが悪い、エミジはそもそも滅多に従わない、頼みの綱のHR-Cは動けない!!」
「・・・・・・そなたも大変だな」
「上司にしか分からねぇ苦しみさ・・・」
 
その後、ディガルトスターへの到着を待つ間、カービィ達も暇を持て余していた。
いつ敵に襲われるとも分からない状況だが、少なくとも現状では船内に異変が起きている様子も無い。
 
 
「・・・・・・・・・暇だなー」
「だらしないわよ、ブン。起きなさい」
「だってさー」
「このまま穏便に終わるのと、敵襲で慌てふためくの、どっちが良い?」
「それはもちろん・・・」
「だったら立ちなさい。カービィなんかずっと張り切っているわよ?」
「あいつはいいよなぁ、退屈知らずで・・・・・・」
 
当然、一行としてもこのまま何事もなく済んで欲しいのが本音であった。
 
 
そう、何事も無ければ。
 
 
「!!!」
 
長らく続いた静寂を盛大に破ったのは、けたたましく鳴り響く警報音。
モニターは次々と「WARNING」の警告が表示され、一切の情報が分からなくなってしまった。
 
「何なの、一体!?」
「ちっ・・・・・・おい聞こえるか、少佐!!今どうなっているんだ!?」
 
無線機を手に中佐が怒鳴った。
同時に覚悟したのは、最悪の事態。
 
≪どうしたも何も、非常事態ですよ!!船内のネットワークへBBBがハッキングしたんです!≫
「何だ、それぐらいで脅かすんじゃない!!」
≪すっとぼけた事言ってるんじゃありませんよ!!この船は自動操縦なんですよ、メインコンピュータがイカれたらお陀仏です!!≫
「・・・ハッ!!!」
≪やっと呑み込めたようですね。こちらも抵抗中ゆえ、そっちは引き続きオボロヅキを守って下さい!!≫
 
そう言った直後、即座に通信は切れた。
中佐は軽く舌打ちし、周囲を警戒しながら身構える。
 
「守って下さい、って随分無責任ね!!」
「第一どうやって立ち向かえってんだよ!」
「だが、今はこの場を離れぬ事に集中すべきだ!みんな、ここから動くな!」
「ぽよっ!」
 
カービィ達も中佐にならい、いつでも戦える体勢を取った。
ハッキングで保管室のロック機能が停止すれば、即座にゲートを破られ奇襲をかけられても不思議ではない。
 
「くっそぉ、どっから来るんだ?上からか?それとも下か?」
「この部屋の壁は強固なんでしょ?だったら攻める所は入り口しか無いわ!」
「帝国ナメやがって、来るなら来いってんだ畜生!」
 
敵が攻め入るなら此処しか無い、と一同はゲートを警戒。
来るならいつでも来い、先手だけは絶対に取らせるものか。
一度失態を犯した中佐の決意は並々ならぬもので、カービィ達にもその熱気が伝わってくる。
閉ざされた空間を支配する静寂と、極度に張り詰めた緊張感。
 
 
 
≪甘いな、この間抜けども≫
 
 
それらを唐突に打ち崩したのは、明らかに聞き慣れない男の声だった。
自分達の後方から発せられたという有り得ない現象を前に、一同が思わず振り向き、各々が我が目を疑った。
 
 
「!!」
「モニターの中・・・ですって!?」
 
 
見れば先程のホログラム状モニターの中に、青い軍服を着た銀髪の男が映し出されている。
一つだけでなく、その他の画面にも無数に。
否、ほぼ全ての画面が謎の人物一色に染まり上がり、異様な光景を醸し出していた。
 
≪貴様らの仲間がやったのと似たようなものだ。外が駄目なら、内側だ≫
 
さも当たり前のように言ってのける銀髪の男に対し、驚きを隠せないカービィ達。
ネットワークを生身で直接行き来できる能力を持つのは、どう考えてもナックルジョー以外に思いつかなかった。
何故、この至って普通の男などが使えるのだろうか。
 
 
「・・・そなたには、見覚えがあるな」
不意に、メタナイト卿が尋ねた。
 
≪・・・だろうな。といっても他の奴等は知らんだろうが≫
「貴様、ヤツだなぁ!?BBB幹部の・・・・・・ええーと・・・」
≪まぁいい。この際だから名乗ってやろう≫
 
そう言うと銀髪の男は、画面手前へ向けて歩き始めた。
まさか、所詮相手はモニターの外に居るだけではないのか?
見る限り、只の人にしか見えないこの男にナックルジョーと同じ芸当など出来る筈が無い。
少なくとも、フームは信じて疑わなかった。
 
 
 
「え・・・・・・」
 
ただし、男が本当に電脳空間から実体化するまでは。
 
 
 
「俺は秘密結社BBB幹部が一人、ガルクシア。既に察しているとは思うが、コレを引き取りに来た」
 
あの能力は嘘じゃ無かったのかと困惑するフームをよそに、銀髪の男、改めガルクシアは目の前のボックスを指差した。
一同の予想通り、同胞の形見、いや同胞そのものを回収しに来たのだ。
 
「やっぱり、オボロヅキが狙いなのね?」
「そのついでに貴様らの始末も任されたんでな。最高司令官が3人仲良く同じ船とは、アホの極みだな」
「ハン、誰のせいだと!」
「俺のせいではない」
「知っとるわ!!」
「お喋りしている暇は無い。ダークマターはBBBの貴重な戦力だ、簡単に封じられては困るな」
 
背中の鞘に収められた2本のサーベルを引き抜き、戦闘態勢を取るガルクシア。
目は全く笑っておらず、ただただ殺意のみを湛えていた。
 
「あんた達の思い通りにはさせない!カービィ、吸い込みよ!!」
「ぽよ!!!!」
 
不意を突かれて侵入されたが、先手だけは何としても逃さない。
合図を受けたカービィが即座に吸い込みをかけ、まずはサーベルを奪い取ろうとした。
 
『無駄だ!!』
 
しかし、敵は全く動じる様子が無かった。
それどころか、帽子やブーツにある瞳のような装飾品が目を見開いた途端に、彼の足元から黒い波動のようなものが噴出し始めた。
ガルクシア自身の瞳も、邪悪に満ちた深い紫色に染まり上がる。
 
「何!?」
『クククク・・・・・・先制攻撃はその程度か?なら、次はこちらの番だァッッ!!!』
 
左手で構えたサーベル、その先端に青白い光が集中する。
一瞬眉を潜めた中佐だが、相手の目論見に気がついたのか突然張り裂けるような声で叫んだ。
 
 
「お前等、しゃがめえぇっっ!!!!」
 
 
次の瞬間、ガルクシアが振るうと同時に1点の光から凍てつく冷気の光線が放出。
凄まじいスピードで薙ぎ払われ、伏せたカービィ達の頭上を掠めるだけで微かに凍りつかせた。
照射を受けた壁には鋭い氷の結晶が生えており、一同を戦慄させるには十分すぎる光景だった。
 
「あいつ、いきなり口調が変わった・・・どうなっているの」
「こりゃあ凄ぇパワーだ、俺と良い勝負だな」
『一緒にするんじゃない、馬鹿軍人が!!クカカカ、焼き尽くす!!!』
 
今度は体全体に真紅のオーラを纏い、中佐めがけて突進。
丁度後ろにあるのはオボロヅキを封じた超合金製のボックスだ、幾ら奴でもこれは破れまい。
攻撃を失敗させるつもりで中佐は回避したが、逆効果に終わった。
 
「げっ!!」
「嘘ぉっ!?」
 
ボックスに激突しても止まるどころか、ガルクシアは強引に押し切ってゲートへ突撃。
強大な力を受けたゲートは物の無残にひしゃげて崩壊。
ボックスもガルクシア自身の超高熱と相まって簡単に分解されてしまった。
どちらも材質まで同じ、超合金で作られたもの故の結末であった。
 
 
『ハッ!これは手間が省けた、ありがとよ間抜け軍人!!』
中佐の氷が砕かれ顕わとなったオボロヅキを足元に、ガルクシアのオーラが漆黒に変化する。
 
「おあぁぁぁ、待てこの野郎!!!!」
『待たん!!!』
 
直後、大量の黒い星屑が舞い上がり、ガルクシアとオボロヅキを包み込んだ。
完全に見えなくなった辺りでようやく中佐が殴り込むも、既に姿は跡形もなく消えていた。
 
「ち・・・・・・畜生ッッ!!!!」
 
再び犯した失態を嘲笑うかのように、星屑らも霧散して消えていった。
そこへ入れ替わりに少佐、大佐らが駆けつけ、事態を直ぐに把握したようであった。
 
「またやっちゃったようですね、このダメ軍人!!」
「・・・・・・・・・・・・」
 
嫌味ばかりの少佐に怒られても、中佐は何も言い返さなかった。
否、今の彼は言い返せるだけの立場には無い。
 
「仕方ない。奴、ガルクシア自体は既に我々のうちでもリストアップされていたが・・・・・・あの能力を持っていたのは初めて知った
「ん。言われてみればそうですねぇ・・・・・・我が軍にも数回対峙した者はいましたが、電子体への変換や属性能力を持っていたかまでは・・・」
 
話を聞く限りでは、帝国軍にとっても予想外の要素が多少あったようだ。
しかし一方の中佐は、自分の失態を悔やむばかり。
 
「・・・済まなかった、兄者。カービィ達は手も足も出ず、肝心要の俺は敵を助ける格好となってしまった。畜生!!」
「構わん。最後に我々が笑えば、それでいいさ」
「!!・・・・・・」
 
決してあってはならなかった失敗を、大して気にもかけない大佐。
普通なら良くて厳重処分、悪くて軍法会議で更に恐ろしき審判モノだ。
成程、これほどの器なら道理で、この地位まで上がってこられるはずだとフームは思った。
 
「くぅぅっ・・・・・・」
 
それにしても、変だ。
あのガルクシアという男、どうやって人ならざる特殊能力を身につけたのか謎であったが、もっと不思議な事がある。
途中から人が変わったかのように、乱暴な口調と性格が目立っていた。
とても同一人物によるものとは思えない。
 
 
まるで―――別人であるかのように
 
 
「・・・・・・失礼。もしもし、こちら少佐。・・・・・・ええ、はい・・・・・・え?」
 
感極まる中佐をよそに、無線に応答した少佐の顔が大分引き攣り始めた。
その表情は、明らかに聞きたくない情報を聞いてしまったと言いたげである。
 
「・・・・・・マジですか?」
 
突然、船内が激しく揺れた。
鳴り響く警報音の中、カービィ、大佐達も直ぐに状況を呑み込んだ。
 
「・・・もしや・・・・・・」
「・・・そのまさかです。先程の侵入者が、輸送船のシステムしっちゃかめっちゃかにして大変な事になっています」
「具体的にどうなるのよ!?」
「えーと、とりあえず今分かっているのは・・・・・・この付近の船体がパージされます」
「パージって?」
「・・・・・・船から切り離されるって事よぉ!!!」
 
 
≪これより、エリアCのパージを開始します。繰り返します、これより―――≫
 
 
「エリアC!!丁度ここだ、兄者!!」
「まずいな、全員退避するぞ!」
 
いつまでも此処に留まっていれば、船体もろとも宇宙のゴミだ。
最高司令官3人の後に続き、パージ対象エリアから脱出するべき必死に走る。
だがカービィ達の後方では、天井から続々とシャッターが下っていく。
閉まりゆく鉄の壁との距離は次第に縮まっていき、ついに一同の恐れていた事態が起きた。
 
「うわっ!?」
「ぽよ!?」
 
あと少し、パージ外のエリアに脱せる直前で最後の一枚が、カービィ一行と司令官らを遮断したのである。
 
「くそっ!!開けったら!」
「そっちの攻撃で何とかならない!?」
「無理だ、生半可なダメージは一切通さない!!」
 
両側から必死にシャッターを叩きつけるが、魔獣を想定して設計された遮断壁が人の力など、簡単に通すはずもない。
 
「メタナイト卿!」
「ダメだ、フーム。ソードビームで貫通できたとしても、船まで損傷する恐れがある」
「じゃあ、どうすれば!!」
「あまり口外したくなかったのだが・・・特例だ。シャッター右側の端末に、今から言うパスワードを入力しろ。“**********”」
「“**********”、ね!?分かったわ――――――」
≪エリアC、パージ開始。第1艦橋ジョイント解除≫
 
今まで鳴り響いていた警報音が違うものに変わり、ガシャン、と何かが外れるような音がした。
遂に恐れていた事が始まったのだ。
 
「!!」
「すまない。パージが始まると、入力を受け付けない仕組みになっているのだ・・・・・・くっ」
「万事休す、かよ・・・!!」
「そうだ!!」
 
半ば諦めムードが漂う中、中佐が突然ひらめいた。
 
「確か、そっち側に脱出ポッドがある!丁度さっきの交差路まで戻って、右に行ったところだ!!」
「でもシャッターが!!」
「いや、此処以外のであれば、パージ中もOKなハズだ!!そうだろ、兄者!?」
「・・・・・・ああ」
「ついでに一言!丁度この船は惑星の近くを航空しています!大気圏突入も時間の問題ですよ、急ぎなさい!!」
「分かったわ!!行きましょう、みんな!!」
「うん!!」
「ぽよ!!」
 
新たな希望が見出せた今、燃え尽きてはたまったものじゃないとカービィ達は走りだした。
 
「生きて会えなかったら許さんからな!!・・・・・・死ぬなよ!!!」
 
 
_________
 
 
「ここか!!」
 
立ち塞がる鉄の壁を1枚1枚解除し続け、やっとの事で脱出ポッドの格納庫に到着。
しかし既に、多くの帝国兵が一目散に逃げ出した後だからか、肝心のポッドは後1機しか残っていなかった。
機体も申し訳程度の収容スペースに窓も1枚のみと、最新技術に秀でた帝国軍のものとは思えない簡素ぶり。
 
「こんな狭い所に!?」
「もとは2,3人乗りなんだろうけど、ワガママ言うんじゃないの!!」
「乗るぞ、皆!!」
「ぽよ!」
「あーもぉー、くそぉっ!!」
 
若干ためらったブンが最後に乗り込み、脱出ポッド起動。
瞬時に船外へと排出され、宇宙空間に放り出された。
 
「狭い・・・・・・」
「あれは一体・・・?」
 
フーム、メタナイト卿以外には窓の外を見やる余裕も無かったが、眼下には大地の裂けた砂色の星があった。
 
「あれはホロビタスターだな。遥か昔、高度な文明を保っていた星と聞くが・・・・・・」
「どっかで聞いた事のある名前だけど・・・いつだったかしら―――」
「げっ!まさか、あそこに落ちるのかよ俺達!?」
「みたいね」
「マジかよぉ~~~~!!」
 
いくら喚こうと、脱出ポッドは星の引力に引き寄せらているため手遅れである。
そもそも単なる緊急脱出用の船に、まともな推進機能などある訳が無かった。
 
 
 
 
「・・・・・・険しい旅になりそうね」
 
 
 
 
 
_____________________________
 
 
 
あとがき
 
ちょっとここで皆様にお詫びが。
 
この暗黒の嵐っつうか、ディガルト帝国とBBBの抗争を軸とした本シリーズは
予定では凄まじいボリュームのお話になるはずだったんですね。
それこそ原作64のクリスタル集めの旅を馬鹿正直に忠実に沿っていくという。
でも。
 
 
発想と技量が噛み合わない\(^p^)/
 
 
いや、1,2年前の熱気があった当時なら分かりませんよ。クオリティはともかく。
しかし管理人もここ最近はオフの事情で非常に忙しくなり、あれよあれよという間に創作意欲をゴリッと削られてしまいました。
昔よりもオン以外でやりたい事が圧倒的に増えてしまったのも、小説コンテンツ、ひいてはサイトが亀更新と化した最大の理由です。
 
多分、このまま丁寧にお話を進めたとしても、完結がいったい何年後になるのやらサッパリ分かりません。
というかオフの多忙が災いしてまともに書く時間もありません。
これはまずい。自分が一番書きたい話が書けない!
 
非常に申し訳ないのですが、そんな事も色々ありまして、ここから話の展開を一気にスキップさせていただきます。
道中のあらすじはダイジェスト形式で紹介するつもりです。
ついでに少しネタバレっちゃうと、復讐者~の主人公たるクロストルもこちらの本編に途中から関わります。
しかしそれには、彼とカービィ一行が和解している前提で話を書かないとならないので
そのいきさつを描くために復讐者~の連載を始めた訳なんですが、多分こっちも間に合わない/(^o^)\
という訳で、まだ向こうが完結しないうちに登場いたしますが、向こうの連載再開まで和解の経緯を好き勝手想像していただければ、と・・・・・・
ちなみに復讐者~本編と絡めたネタは出しません。いや、まだ構想練ってないんだろとかそういう事じゃなくて・・・
あれですよ、前作やった事ない人でも安心!という旨のことを言いたいわけです。
 
 
さて、一体どこまでスキップいたすのかと言いますと・・・・・・・
今回カービィ達と初邂逅しましたね、ガルクシア。
彼がシリカと並々ならぬ因縁を持っているのは、他のお話でも述べたとおりです。
そう、遂にこの二人が宿命の再会を果たす、その手前のところまで飛ばします。
いきなり重大な展開が迫っております。
果たして二人の結末はどうなっちゃうのか・・・
 
 
というワケで、暗黒の嵐は一旦これにて終了です。いや元からこの辺で区切りなんだけども。
大事な局面を控えた次回、気長にお待ちいただければ幸いです。
 
 
 
 
<<前へ  お疲れ様でした
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・・・・・ところで、ガルクシア話を読んだことのある皆さんなら、既に気付いていると思います。
今回の彼、しゃべり方が『』になった途端にいろいろ変貌していましたよね?
それも昔より、非常に好戦的なカンジの。
 
この辺りも実はちょっとしたヒントです。ガルクシア話をよく思い出してみてください。
過去に彼は、ナイトメアから「何を」譲り受けましたか?
それは一体、どんなシロモノでしたか?
結果としてガルクシアは、どんなチカラを身につけましたか?
 
あとは戦闘後、フームが疑問に思ったことが最大のヒントではないかと自分は思います。
今のガルクシアに一体、何が起きているんでしょうか。