イレブンス

 

 

 

 

 
 
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ダークマター襲撃事件の翌朝。
 
「はぁーあ・・・・・・」
デデデ城中庭に張られたテントのうち、黄色い屋根の外でコーヒー一杯を啜るマター少佐の姿があった。
 
 
 
はっきり言って、疲れた。
一日の間にどれだけ多くの出来事が起きた事だろう。
それらを一つ一つ、自身の脳内で整理する事にした。
 
「後でサーチマターに訊きますかねぇ、内容・・・・・・」
 
先ず、ププビレッジとの会談とやらは有耶無耶に終わった。
ダークマターの所為である。
最もな話、本来の目的を考えると会談はカモフラージュに過ぎないのだから、こちとら特に何の損害も無いだろう。
それをデデデ大王が把握しているかについては、帝国軍の知る所ではないが。
 
「まぁそもそも、王様がいないんじゃ何も意味を成さないのですが」
 
会談と言えばレイチェル、後デデデ大王らの行方。
まさかラージクリスタルが突発的に転移能力を発揮するとは想定外だった。
自分らに直接的な責任は無いにしろ、指導者とナンバー2が居ないこの国はどうなってしまうのか?
帝国を中心に考えるならば、ここは軍が代わって仕切るのが当然だろう。
しかし、城にはあの生意気な小娘が居る。
大臣の頼りなさを見る限りでは実質的に、彼女が今後暫く指導者代行を務めるに違いない。
軍隊嫌いの小娘が、だ。
帝国にとってやり辛い事この上ない、早め早めに手を打つよう大佐に耳打ちしておくか。
 
「・・・・・・いや、そんな事はどうでもよかったのです」
 
いや、それよりもっと優先すべき事柄がある。
ドブネズミ共2匹の行方。
 
「はぁーあ!!」
 
大佐と中佐の証言では、割って入る形でクリスタルを持ったモギーが乱入。
更に其処で空間が裂け、他の星への入り口が出現。
奴ら二人はまんまとその穴へ逃げ込んだらしい。
全く腹立たしい連中だ。
サーチマターと一悶着あった所為で、直々に自ら現場に向かえなかったのが悔やまれる。
 
「・・・・・・しかし、今思えば私もエリートとは言いがたい行動を・・・・・・」
 
更に、あの出動命令のせいで飛行艇は要らぬ被害を被ってしまった。
ただでさえ耐久面に問題のある船、しかも止めを刺したのが中佐とは、怒りを通り越して呆れ果ててくる。
緊急用の倉庫を除いた大部分が海水に浸かったせいで、当分動きそうに無いとはメカニックの弁。
結果論だが、もう少し後先考えるべきだったのでは、と後悔の念も湧き出してきた。
 
「・・・割り当てられた予算がどんどん減っていく・・・・・・」
 
HR-Cは今回バックアップへ徹したにも関わらず、またもや破損。
カービィといいダークマターといい、奴らはあの機械兵がいかに特別な存在か理解していないようだ。
 
「元はと言えば!オボロヅキが!ダークマターさえ来なければ!!」
 
結局、ダークマターの襲撃があらゆる事象をややこしくしたと言っても過言では無かろう。
カービィを危険因子と断定するか否かの話も。
ただ、それに関しては後に大佐が
「もう良い。ミックスコピーは拝見できなかったにしろ、当面の危険性は皆無だ」
と判断を下したので、本件についての心配は無用かも知れない。
 
 
だが、何故だ。
大佐曰く、ラージクリスタルが既にカービィ達の手に渡っているのは確実だという。
ならば、何故取り返そうとしない?
BBBとの攻防が激しい昨今の情勢を、大佐はしっかり踏まえているはずだ。
事の外、クリスタルに関しては一刻を争う事態になりつつある。
 
「連中を泳がせておく」という大佐の真意が読めない。
そんな煩わしい事をせずとも、我々が長年培ってきた科学技術を駆使すれば、残りのラージクリスタルなど直ぐに見つかる。
一体何を考えているのやら。
 
 
「・・・しかし、一番解せないのは――――――」
 
 
 
 
 
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「私からはひとつ、ディガルト帝国について知る限りのことをお話しましょう」
 
 
一方、大臣一家のリビングではサーチマターによる帝国講座が始まろうとしていた。
彼が入手した情報では、ソルジャーズ・バースト破損の知らせを受けて迎えの艦船が送り込まれたらしい。
そうと分かれば、この国に居られる時間も限られてくるだろう。
少しでも帝国やその周辺の事について一定の知識を有してもらうべく、このような集まりを開いたのである。
 
 
「・・・・・・と、その前にカービィさん、フームさん。クラッコリベンジを討ってくれ、本当にありがとうございました」
「え?え、ええ・・・・・・」
「昨日は諸事情ありまして、日を跨ぐ前に御礼を述べる事が出来ませんでした。どうか、お許し下さい」
「ね、ねぇ、サーチマターさん」
「何でしょうか」
「一体どうしたっていうの?急に改まって」
「頭でも打ってしまったんでしょうか?」
「なんか不気味だぜ」
「ぽよ」
 
ざわめく一同。
昨日と比べて様子のおかしいサーチマターを相手に、フームが恐る恐る疑問をぶつける。
答えは即座に返ってきた。
 
 
「・・・・・・申し訳ない話、実は貴方がたを見くびっていました」
「ぽよ?」
「クラッコリベンジはBBBの飼い慣らす魔獣の中でも、特に凶悪な魔獣。しかも、超高圧の電流に対抗し得る手段が、酸ごときで溶ける粗末なスーツ」
「・・・・・・・・・」
「あ、今のそれは実のところ想定外でした。それを抜きにしてもクラッコを通算2度捻じ伏せ、勇敢なサポーターとして貢献した御二人の底力には参りました」
「そんな・・・・・・あれでも本当は辛勝だったのよ。決して楽に勝てた相手じゃない」
「ですが、その手で勝利をもぎ取ってみせたのは事実。・・・・・・久々に信頼できる相手が見つかりましたよ」
 
数本のカメラ付きアームの視線を一点に集中させると、突然ホログラムが浮かび上がった。
驚いたリボンは思わずひっくり返ってしまい、カービィに起こされる。
 
「先程から一言も喋っていない騎士の皆さんも、よく聞いてください」
 
カービィ達の後ろで直立の姿勢を貫くメタナイト卿ら3人。
最後に一言付け加えた後、ホログラムの投影に集中する。
 
「或いは、耳が腐るほど聞いてきた事でしょうが」
 
 
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サーチマターのMr.ニュース 気になる3つのキーワード
 
・ディガルト帝国
・秘密結社BBB
・クリスタル
 
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|    <<そうだったのか!ディガルト帝国>>      |
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「どっかで聞いたタイトルだよな・・・」
「シッ、静かにして!」
 
 
 
 
「まずはこちらのグラフをご覧下さい。ディガルト帝国は宇宙でも有数の超大国にして、事実上最大の軍事国家です。
人員、保有兵器、輸送船、戦艦、規模、国家財源などなど、どれを取っても最高クラスですね。
ところで今、皆さんの中に恐らく、これだけの力を持ちながら「なぜ“事実上”と言ったのか?」という疑問が浮かんでいることでしょう。
と、いうのも・・・これは誰もが知る、宇宙史で最も有名な戦い『銀河大戦』が、少なからず影響しているのです」
 
 
 
 
「宇宙の帝王『ナイトメア』が、無尽蔵に魔獣を生み出し宇宙各地を侵略したことは、皆さん御存知ですよね。
その際に、色んな惑星がナイトメアの支配下に入りました。例えばメックアイ。
この星は“機械惑星”という異名から想像できるように、鉄鋼資源に関しては非常に恵まれていました。
星そのものが機械なのですから、幾ら鉄を剥ぎ取り、溶かして再利用しても困りませんよね。おかげでメックアイは、ナイトメア勢力の大事な資源供給ラインを担いました。
それだけではなく、機械魔獣『ヘビーロブスター』シリーズや、かの破壊兵器『デスタライヤー』をも製造していました。
このようにナイトメアは、自分の侵略計画が有利になりそうな星をどんどん乗っ取っていったのです」
 
 
 
 
「ちょっと待った!」
「はい何でしょうか、ブンさん」
「それと帝国が一番強い国になった事と、どう関係があるのさ?」
「いい質問ですねぇ。ではこちらのホログラムをご覧下さい。これはナイトメアの侵略を受ける前の、メックアイ前線基地の画像です。物々しい様相ですね」
「すっげぇ!ミサイルとか砲台とか、カッコ良さそうなロボットばかりじゃん!」
「メックアイが侵略されたのはもう何千年も前の出来事ですが、奇跡的にこんな資料が残っていたんですね、はい。そしてこちらは侵略後の画像です」
 
 
「!!・・・・・・・・・・・・」
 
 
「何よこれ・・・・・・全然残ってないじゃない」
「はい。これはですね、ナイトメアは自分の占領した星よりも、自分の牙城に戦力を集中させる方が賢いと考えたんですね。
一番大事な拠点が落とされては堪ったものじゃありませんからね。
でも理由はそれだけじゃないんですよ。フームさん、その理由が何なのかお分かりでしょうか?」
「えっと・・・・・・さっきの話にあった、鉄で出来たものを溶かして再利用するため・・・・・・?」
「確かにそれもありますね。でも惜しいです」
 
 
 
「あっ!!・・・・・・・そうか、分かったわ。占領した星の住民が反抗できないように、武器を取り上げたのね」
「その通りです、フームさん」
 
 
「ナイトメアは無敵の存在として恐れられていましたから、別にどれだけ多勢でかかってこようと、痛くもかゆくも無いはずなんです。
しかし彼は、少しでも侵略が滞るような事を凄く嫌っていました。自分の思い通りに上手くいかないと、腹立たしくて仕方ないんでしょうね。
そこで戦力増強も兼ねて、ナイトメアは侵略した星からありとあらゆる兵器と、その技術・知識だけを根こそぎ奪っていきました。
私達のように高度な知能を持った生き物は、モノを取り上げられても作り方さえ頭の中に残っている限りは、いつでもそれを作れますよね。
だから先程のメックアイも同じく、科学者の方々は皆あれらの武器の作り方を忘れられてしまいました。
武器だけじゃありませんよ、占領下の住民は大事な労働力でもありますから、逃げられないように宇宙船の知識も取られちゃったんです」
 
 
 
 
「当時、そういう目に遭わされた星が沢山ありました。中には原始時代レベルにまで文明が逆戻りした所もあったんですね。
結果、まともな戦力を保持できていたのは、メタナイト卿さんが元いた銀河戦士団と、ディガルト帝国。この二つだけでした。
だって他の星も抵抗しようにも、武器の作り方が頭に無いんですから。
更に大戦終結後、ナイトメアは自分の会社『ホーリーナイトメア社』を設立して、今まで支配してきた惑星を影から牛耳るようになりました。
こちらのホログラムは、その当時のメックアイの街中です。一見、ごく何の変哲も無い光景に見えますね。
表向きは直接支配されていないように見えるんですが、実はその裏では政府へも介入する、非常に厳しい情報管理体制が敷かれていたんです。
うっかり兵器の設計図などが反抗勢力の手に渡っては大変ですからね。常に反逆のスキを与えないよう心がけていました。
この体制がつい近年まで続いていたものですから、現在でも軍隊と呼べる軍隊を保持する国の数はとても少ないんですね。
もちろんナイトメアの支配を受けずに済んだところもありますよ。ですが、それでも規模や技術の面では帝国に遠く及ばないんです。
これが、ディガルト帝国が“事実上最強”と呼ばれる所以なんですね、はい」
 
 
 
 
「・・・・・・つまるところ、比較しうる対象が存在しなかったのだな?」
「そういう事ですね。でも冒頭にお見せしたデータは全部本当の事ですよ。どっちにしろ、ディガルト帝国が強いという事には変わりません」
「へぇー・・・・・・よく分かりました」
「さて、そのディガルト帝国ですがお察しの通り、現在かなりの苦境に立たされています。
原因は色々ありますよ。対立組織である『秘密結社BBB』の過激なテロ活動や・・・・・・皇帝が暗殺されてしまった事など。
残念ながら皇帝の件に関してはまだまだ不明瞭な点が多いので、此処では申し上げる事が出来ません。代わりにBBBの事をお伝え致しましょう」
 
 
 
 
 
 
 
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<<そうだったのか!秘密結社BBB>>
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「今回プププランドを襲撃したダークマター、或いはオボロヅキ。彼は秘密結社BBBの中でも優秀な幹部でした。
そのBBBは今、フォトロン族の抹殺を企てているキケンな組織として知られていますが、もっと具体的な目的も知りたいですよね。
其処には、ダークマター族の歴史だけでなく、色々な要素が複雑に絡み合っていたのです」
 
 
 
 
「そもそも秘密結社BBBは、一般には反聖感情の強い過激派ダークマター族の集まりとして知られています」
「反聖感情?」
「聖、というのはフォトロン族の事を指しています。ダークマター族はかつて、そのフォトロン族に虐げられてきた苦い過去がありました。
昔のフォトロン族には光と闇という構図だけで、自分達の存在は正義であり、ダークマター族は悪だという極端な勧善懲悪論が定着していました。
迫害される方としては、そんな滅茶苦茶な理屈で殺されるなんて理不尽極まりませんよね。反聖派はそれに対する古くからの恨み節が強く残っているんです。
彼らは特にディガルトスター出身の者が多く、その星が誕生した時から少なからず存在していたようです」
「その頃から、BBBのような組織が?」
「いえ、この頃は確かに、フォトロン族へ憎しみを抱くダークマターも決して少なくありませんでした。
そんな彼らの意識が変わったのは、星の外からやって来た異文化人と交流した時です。
相当良い考えをお持ちの方だったのでしょう、恐らく彼らに「憎しみだけでは何も変わらない」と説いたのかも知れません。
その後ディガルトスターの住民は、彼の持ち込んだ科学技術で目覚しい発展を遂げつつも、その過程で生まれた兵器を悪用する事は決してありませんでした。
・・・光闇戦争が起こるまでは」
 
 
 
 
 
「この戦争が勃発する前、当時のダークマターとフォトロンの二種族は、以前よりは険悪な関係でなくなりました。
しかし、フォトロン族の方には未だ古い思想が根付いていました。それが事件の元でした。
ある時、ピピ惑星で一人のダークマター族の子供が殺されてしまいました。王家のパレードを邪魔したとか、粗相を働いたとか、様々な説がありますが・・・・・・
いずれにせよその裏には反黒感情、つまり対等な地位にまで上り詰めたダークマター族への憎しみが絡んでいたようですね。
彼らにしてみれば、憎まれ役が何時の間にか好かれていたのと同じくらい、非常に気に食わなかったのです」
「けど、ダークマター族は黙っちゃいなかった訳だよな?」
「はい、正確にはディガルト帝国のダークマター族ですけどね。古来より全く変わっていないフォトロン族に激昂した彼らは、ついに行動へと出ました。
帝国は大規模な軍隊をピピ惑星に送り込み、戦争を始めたのです。こちらのホログラムをご覧下さい。
当時最先端だった光学兵器や宇宙戦艦です。彼らはこれを存分に駆使し、圧倒的な軍事力で制圧に成功しました。
しかし驚くべき事に、対するフォトロン族の軍隊は全く進歩していませんでした。長きに渡る平和にかまけていた事で、政治も何も変わろうとはしなかったのです。
それが光闇戦争におけるピピ惑星、およびフォトロン族の敗因とも言われています」
 
 
 
 
 
「その後しばらく、ピピ惑星はディガルト帝国の占領下に入りました。
ピピ惑星の腐敗した政治情勢も踏まえ、今までも酷い仕打ちをしてきたフォトロン族なんて一人残らず殺してしまえ、という世論が帝国に渦巻いていました。
ところが、当時のゼロツー皇帝はそれを良しとしませんでした。彼はかつて世話になった異文化人の言葉を借りて、憎しみだけでは何も変わらないと説いたのです。
後にゼロツー皇帝は、想定を遥かに上回る被害を与えてしまった事について懺悔すべく、ピピ惑星の首脳国家であるローナ公国で自ら演説を行いました。
この時の演説ですが、元々彼は口達者であった事もありまして内容があまりにも饒舌で、種族問わず皆一様に聞き入っていました。
更にゼロツー皇帝は途中から本気で悲しみ始め、遂には滅多に流さない涙を見せた様子から“ティアドロップ・スピーチ”とも評されました」
「・・・・・・なんか胡散臭い・・・・・・・・・」
「ええ、当時あの演説を「パフォーマンスの一環に過ぎない」「大仰な小芝居だ」などと扱き下ろした政治評論家も少なからずいました。
ですが、その後のピピ惑星に対するディガルト帝国の態度や支援活動は、紛れもない誠実なものでした。
彼らは自分で決めた重大な約束事は決して破らないよう、最大限に努力する志向の持ち主でしたから、次第に外部からも大多数のフォトロンからも信頼されました。
とは言っても本心では、その巨大なパワーに対する畏怖も隠れていたかも知れませんけどね」
 
 
 
 
 
「さて、皆さんお待たせしました。いよいよ秘密結社BBBの誕生に迫ります。
国内で反聖感情が高まった事の発端は、先程のティアドロップ・スピーチにありました。
ゼロツー皇帝は演説の中で、「我々は今後一切、手出しされぬ限りは不当な攻撃を働かない」と約束しました。
言い換えれば、「やられたらやり返す、やられるまでやり返さない」と同じ意味ですね」
 
 
 
「そして今の言葉に続き、「時が経ち次第、フォトロン族との和平を結ぶ」と発言した事で、反聖派の怒りを買いました。
天敵と仲良しこよしなんて、彼らにとって在り得ないことでしたから。
それからというもの、帝国内は大変でした。反聖派の国民が各地でデモを行い、フォトロン族の支配を訴えました。
すると政府としては、あまり気分の良い事では御座いませんね」
「後の和平に差し支えるからな」
「はい。国にとって和平はもう決定事項のようなものですから、今更反故にも出来ないですよね。
ですから皇帝はそういった輩たちを、部下の一人である『プリズナー女将軍』に厳しく取り締まるよう命令し、自身は積極的に親聖派をアピールするようになりました。
彼自身は国民から、絶大な信用を寄せられる程のカリスマを持っていたので、世論を誘導する事など訳ありませんでした。
それでも反聖派はますます増長していき、次第に組織化された過激なアプローチを取り始めます。もうお分かりですよね」
 
 
 
 
 
 
 
 
「秘密結社・・・BBB」
 
 
 
 
 
 
「そうです、フームさん。この時はまだ反聖派の寄せ集めという感じだったんですが、次第に強大な実力者たちが台頭し始め、計画的なテロが増加しました。
そして彼らは、リップルスターで実に恐ろしい大事件を引き起こすのですが、これは・・・・・・後ほどお話致しましょう」
 
 
 
 
 
「その事件の後に行われた犯行声明文の発表を皮切りに、秘密結社BBBの名は宇宙中に轟きました。
ただ実を言うと、この頃は現在ほど注目を浴びてはいなかったんですね」
「どうしてですか?」
「この一連の出来事は宇宙全体で見ると、銀河大戦の真っ只中に起きたものなんです。
どこも魔獣との戦いで手一杯なのに、ポッと出のテログループに構っている暇は有りませんよね恐らく。
しかも更に時が経つと、伝説の犯罪者『アーカイブス』の登場が宇宙世間の注目を掻っ攫いました。
「アーカイブスの悪行に比べればBBBなんて可愛いもの」とまで言う人も居たぐらいで、当時の秘密結社BBBは完全にバカにされていたんですね。
帝国軍の『ホークプライツ将軍』主導による掃討活動の効果もありまして、BBBの活動は次第に萎縮していきました」
「・・・・・・・・・」
「一時はナイトメアと結託するんじゃないか、という噂も流れました。しかし彼は、利用できるものなら何でも利用する冷酷な男ですから、裏切られる危険性もありますね。
そして気がつけば、BBBは突如として消息を絶っていました。ようやく諦めたか、と帝国軍は大喜びです」
 
 
 
 
「ですが、実は消えたんじゃないんです。隠れていただけなんですね。
誰かがホーリーナイトメア社を滅ぼしてくれるチャンスを、彼らはずっと待っていました。そしてカービィさん、あなたはナイトメアを倒しました」
「ぽよ・・・・・・」
「別に悪い事じゃないんですよ。彼もBBBと同じぐらい危険な存在でしたから、いずれ誰かがやらなくてはいけない事でした。
ともかく、厄介者が消えた事で安心して活動が出来ると、再び息を吹き返したのです。
彼らは手始めにブルブルスターの都市部を占領し、そこを新たなアジトにしました。
そうして彼らは今、理想の実現に向けて帝国軍と激しい争いを繰り広げているのです」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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<<そうだったのか!クリスタル>>
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「長くなりましたが、これが最後の解説になります。今リボンさんが抱きしめている、クリスタルについてお話しましょう。
クリスタルは莫大なパワーを濃縮した水晶でして、一般には強き者だけが願いを叶えることで出来ると言われています。
正確には何でも叶うというよりも、引き出したパワーを持ち主の願いに応じて具現化させる・・・といった所でしょうか。
・・・正直な話、リップルスターの住民の皆さんは歴史への関心が薄いんですね。
ですから、リップルスターの歴史に関する文献が現地には殆ど残っておらず、クリスタルについても未だ謎に包まれているんです」
「ごめんなさい・・・・・・」
「別に謝る事ではありませんから、大丈夫ですよ。さて、このクリスタルですが、実は本来の形の破片に過ぎません。
先程のBBBの話に少し出てきた事件のせいで、リップルスターのクリスタルはバラバラに砕かれてしまったのです。
その時リップルスターに何が起きていたのか、皆さんに解説したいと思います」
 
 
 
「こちらのホログラムをご覧下さい。一見若そうに見えて渋い男の人ですね。でも背中から羽が生えているようにも見えますね」
「!・・・・・・この男は」
「御存知ですか、メタナイト卿さん?」
「ああ、知っている。『クライヴェール・トステリアン将軍』。リップルスター出身の妖精族において唯一の男性。帝国軍で数少ない、真っ当な武人・・・」
「その通りです。トステリアン将軍は私も尊敬している優秀な軍人でして、特に光学武器“レーザーブレード”を用いた剣術は鮮やかで美しいと評判です」
 
 
 
「実は彼が帝国軍にやってくる前、ディガルトスターとリップルスターは全く交流がありませんでした。
いえ、正確には何所とも交流は無かったと言うべきでしたね。
妖精族はクリスタルの力で、星全体を覆う結界を張っていたので、傍目から見ると存在すら誰にも分かりません。
そもそも妖精達は外界を既知していても、結界の外へ出るという発想自体が無かったんです。
しかしある時、一人の妖精の少年が「外の世界へ旅立ちたい」と、当時の代の王女に懇願しました。
彼はいつまでも閉鎖的な環境にいることを拒み、見た事もないものに触れ、知りたいと思うようになったのです」
「その子が後の・・・」
「トステリアン将軍です。仲間達は難色を示しましたが、最終的に王女の一声で結界の外へ出る事が許されました。
貸し与えられた宇宙船で旅立った彼が最初に出会ったのは・・・・・・ディガルト帝国軍の兵士でした。それもリムラのような一つ目タイプの。
トステリアンはその兵士を化物だと思い込み、襲いかかってしまったんです。でも帝国軍の皆さんは強いですから、最終的に往なされてしまいました。
ですが、その一報が偶然ゼロツー皇帝の耳に入りました。彼は捕らえたトステリアンから事情を聞き、軍で預かる事にしました。
皇帝は戦いに関する観察眼も非常に優れていましたから、育てれば大きく伸びる、と確信したんでしょうね」
 
 
 
 
「さて突然ですが、妖精族は年を取るとどうなりますか?リボンさん」
「え?え?えーっと・・・・・・成長しても大人の・・・まま!」
「その年で良く知っていましたね。流石ですねぇ」
「えへへ・・・・・・」
「正確には我々と同じ大人にまで身体的に成長した後、殆ど老いる事は無いんですね。ただ、年老いていく時は一気に老けていきますが。
将軍にまで上り詰めた頃には、もうトステリアンは立派な大人でした。剣の腕も申し分ないぐらいです。ただ、彼は故郷に帰らなければなりませんでした」
「どうしてだよ?」
「実は星を出て行く時、王女と約束していたんですね。大人になったら一度帰ってきなさい、と。
それをゼロツー皇帝に相談すると、彼は承諾する見返りに自分もリップルスターに連れて行けと要求しました。
帝国軍は外の世界における育ての親のようなものでしたから、トステリアンも簡単には断れませんでした」
 
 
 
 
 
「その年、トステリアンは約束通り故郷のリップルスターに帰ってきました。・・・・・・ゼロツーを連れて。
外の世界の者を結界内に入れるという、本来約束しなかった事を勝手にした訳ですから、妖精達の間に困惑が広がりました。
するとゼロツー皇帝は、饒舌な喋りで妖精族を説得し、こう言いました。
「我は侵略しに来たのではない。未知に溢れたこの星で、純粋な探究心と好奇心を満たしたいのだ」
彼の言葉に嘘は無いとした王女は、皇帝を信じて握手を交しました。それから、リップルスターとディガルトスターの交流が始まったのです・・・・・・」
 
 
 
 
 
 
「何だよ、こんな時に!」
サーチマターの話をノック音が遮る。
 
「ワドルドゥ隊長であります!大事なお話があるのでお通し下さい!」
 
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ワドルドゥを居間に招いた所で、フーム達は突然訪れた理由を問い質した。
 
「一体何かあったの?」
「はい。実はしっかり聞いて欲しいのですが・・・・・・」
「早く言えよ!」
「先日の氷漬けになった刀の件で、帝国軍から・・・」
「ワドルドゥ隊長、後で連中に伝えてくれないかしら。あれはこっちの判断で地中深くに埋めるって!!」
「それが、実は――――――」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「その刀を本星で封印するので、カービィ達には見届け人として同行を求めたい、とダーク大佐殿がおっしゃっていました!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「え・・・・・・?」
 
突拍子もない話に、一瞬動作が止まる一同。
それから数秒経って、居間より大声が城中に響いたのは言うまでもない。
 
 
 
 
 
 
 
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「ちょ、ちょっと!?それって一体どういう事よ!!」
「私にも分かりません!」
「あいつらと一緒に行けってぇ!?姉ちゃんますます拒否反応示すぜ!!」
「そ、そんな事を言われましても!」
 
「やいの、やいの・・・・・・・・・・・・」
 
 
 
 
 
「・・・・・・サーチマター」
「何でしょうか、メタナイト卿さん?」
「・・・先程のクリスタルの話、途中から違和感を禁じえなかった」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「あたかもそなた自身がその場に居たか、当人から聞いたかのような口ぶり。どういう事だ?」
「・・・・・・後者が正解、と言うべきですかね。トステリアン将軍は私の友人でもあります」
「・・・少なくとも私には、ワドルドゥ隊長が邪魔する前からあの先を言いよどみかけていた、そう見えるが?」
「・・・・・・・・・」
「あの時、クリスタルに何が起きたというのだ?」
「・・・・・・私のような一ジャーナリストが語るには、おこがまし過ぎます。本人の口から聞き出すのが、一番早いでしょう」
「・・・・・・そうか」
 
 
 
 
 
 
 
「私が今言えるのは、それだけです」