chapter:3

 

 

 

 
 
 
 
デデデ城 玉座の間
 
 
「陛下ぁ、良いんでゲスか?」
玉座に座るデデデの前をうろうろし、退屈な時間を過ごすエスカルゴン。
 
「フームの言いなりになって、不必要に城の警戒強めて・・・」
「良い。ワシのメカホッパーちゃんを盗んだ不届き者は極刑にしなければ気がすまないぞい!!」
 
椅子のひじ掛けに拳を叩きつけ、怒りを見せる。
 
久々に悪巧みをしようと思ったらこのザマだ。
外からこの国に訪れる輩は、決まってロクな騒動を持ち込んでこない。
それが攻撃的な実力者であれば尚更の事。
決まって城の一部が破壊され、修理費によって城の財政が圧迫される。
全く持って腹立たしい、連中は疫病神か。
 
 
 
「だからあれは私の・・・」
 
「しかし」
 
「はい?まだ文句あるんでゲスか?」
「いや、シリカの事だが・・・あんなおてんば女にストーカーする輩がいるとは、命知らずな奴ぞい」
「おてんばってモンじゃないでゲス!以前我がデデデ城の屋根を陥落させるまで暴れまくった、恐ろしい女でゲスぞ!?」
 
デデデが不思議がるのも、エスカルゴンには分からない訳ではなかった。
一度ならず二度までも自分達に火炎放射器を向け、牙を剥いた。
あのような凶暴極まりない女戦士を、命の危険を挺してまで付きまとう熱狂的なファンがいる事に理解できないのもうなずける。
 
「エスカルゴン」
「今度は何でゲス?」
 
 
 
「ワシは『返り討ちに遭う』に10万デデン賭ける。お前はどうするぞい?」
懐より財布を取り出し、不敵な笑みを浮かべた。
 
 
 
「そうでゲスね~、じゃあ私はあえて、その逆のパターンに30万デデンを・・・」
対しエスカルゴンは、あご髭を撫でながら自信満々に答える。
 
「むむっ!それじゃこっちが不利ぞい、だったらワシは20万デデンに・・・」
「陛下は分かってないでゲスな~、よく考えるでゲス!」
「?」
 
何のことかデデデにはさっぱり分からない。
 
「普通はああいう横暴な女を好きになる奴はいないでゲス。そんな女にストーカー行為を働くということは・・・」
「どういう事ぞい?」
 
 
 
「よほど自分の実力に自信がある、ってコトでゲス!それこそナックルジョーを簡単にねじ伏せられるような・・・」
 
 
 
「まさかぁ?あのガキにかなう奴などおるまい!」
「どーだか・・・・・・ね」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「へっくしょい!!」
フームの部屋にて、突然くしゃみが出たナックルジョー。
 
「ったく、誰かが俺の噂してやがる・・・・・・あのストーカー野郎か?」
「さしずめそうだと思うぜ」
 
ブンは机の上に置かれたクッキーをほおばる。
廊下側の扉をワドルディ達に固められた中、カービィ、フーム、ブン、ナックルジョー、そしてシリカの5人が部屋に待機。
守りはほぼ万全と言っても良い。
 
「シリカ、お前はもう寝たらどうだ?俺がしっかり守ってやるから」
 
だからこそ、彼女が無理をして起きる必要は何処にも無いのだ。
 
「何言ってんのよ!私だって一泡噴かせるまで一睡もしてらんないわ!」
当の彼女はストーカー退治に躍起で、眠りにつく気は更々無い。
 
「おいおい・・・・・・」
ため息をつくジョー。
 
「どーせ大したことなさそうな奴だろうし、皆で懲らしめてやりましょう!」
「そうね、乙女の敵は何としてでも倒さないと!ね、カービィ?」
「ぽよ」
 
「姉ちゃん、カービィは女じゃねえよ・・・・・・」
そう言ったブン、姉に胸倉のサスペンダーを掴まれた。
 
「私はそういう事を言ってるんじゃないの!!」
 
 
 
 
 
バチッ!!!
 
 
 
 
「なんだ!?」
突然電気が消えた。
 
「停電かしら?」
「ちぃっ、こんな時に!あのオッサン達しっかりしろよな!!」
「とりあえず皆で手をつなぎましょう!万全は期したつもりだけど、絶対に動かないで!!」
 
外でワドルディ達がわにゃわにゃ騒いでいるのが聞こえる。
数分後、非常電源に切り替わった事で電力が復帰。
部屋は明かりを取り戻した。 
 
 
 
 
だが、その間に異変が起きていた。
 
 
部屋の外はワドルディ達がいたのだから何者かが侵入できる余地はどこにもない。
窓も頑丈に鍵をかけたのだ、下手に蹴破ろうものなら大きな音で気づかれる。
したがって外部から侵入できる者は誰もいない。
 
 
なのに、誰かが扉を開けた。
 
 
そして一発、何かを殴るような鈍い音が聞こえ、扉を閉める音が聞こえた。
 
 
 
 
 「やられた!!」
 
 
明かりが点いた現在、この部屋にシリカの姿は無い。
 
 
 
 
 
「犯人は今頃部屋の外よ!急いで追いかけましょう!!」
 
カービィ達が廊下に出る。
見張りだったはずのワドルディ達が全員気絶していた。
 
「なるほどな、これだったら堂々と逃げられるはずだ!」
「私はカービィと一緒に行くわ!あなたはブンと一緒に!!」
 
カービィ達は二手に分かれ、それぞれ反対方向に廊下を駆けていった。
 
 
 
 
 
もちろん、これが罠だった事には誰も気づいていない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「馬~鹿、あ~ほ、ドジマヌケばっかり~♪」
 
 
 
 
 
「・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
 
 
 
 
 
 
犯人は、ストーカーは部屋から連れ出して逃げたのではない。
 
 
 
 
「俺は逃げはしないけど、隠れはしちゃったりして~♪ひゃっひゃっヒャヒャ!!!」
 
 
 
 
 
「あ・・・・・・・・・あっ・・・・・!!!」
 
 
 
部屋の隅に置かれた、ベッドの下に潜り込んでいた。
 
 
 
 
 
 
「どうしてくれちゃおっかなぁ、何しちゃおっかなぁ!!!」
 
 
 
狂気の変質者が牙を剥く。
 
 
 
 

 

 

 

 

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