奴にあのような能力があることは既に知っていたが、ここまで追ってくるとは。
ふざけるな、誰が返すものか!!
お前にシリカの何が分かる?
お前などでは彼女が悲しむだけだ!
「ほらね・・・・・・あんな真剣な眼差しの人が、私を心から好きだと思っていないはずが無い」
「くっ・・・・・・・・・!!!」
ただのクソガキだと思ってあまり相手にするつもりはなかった。
このまま振り切れば良いだけの話。
最初はそう思っていた。
しかし、本当に奴がシリカを大事に想っているか気になり、居ても立ってもいられない。
「おい」
「何だよ!!」
「ナックルジョー、お前はシリカを本気で愛しているのか?」
「な・・・・・・!」
「いきなり何を馬鹿な・・・・・・・」
「ぽよ?」
カービィには何のことか分からない。
分からない方が都合が良くて助かる。
「答えろ。俺を納得させるほどの回答でなければ、シリカの前から消えろ。そして二度と姿を見せるな、永遠に!!」
「ジョー!」
「・・・・・・・・・・・・」
どうせロクな返事ではない。
人の好意に鈍感な男が今の問いに対し、まともな言葉を紡ぎ出せるはずがない。
「俺は・・・・・・・・・」
少なくとも、奴の出した答えを聞くまではそう思っていた。
「・・・・・・正直、シリカとは今まで友達同士って感覚しかなかった」
ほら見ろ。
所詮その程度だ、クソガキ。
「ただ、初めて会ったときのシリカは、どこか悲しい顔をしていた」
「お互いに今までの経緯を明かして、すぐに意気投合した。共に親を殺された者同士、共にナイトメア打倒を目指す者同士として」
「シリカは、俺と一緒に行動しているうちに笑顔を見せる回数が段々増えていった。俺も、シリカと一緒にいる時は自然と心が和むようになった」
「・・・・・・・・・ジョー・・・・・・」
「そこで俺は気づいてしまったんだ。お互い、本当は今まで寂しかったんじゃないかって」
「俺は親父が星の戦士に殺されたとの知らせを聞いた当時、誰の助けを借りようともせず、一人で敵討ちに躍起になっていた」
「それが誤解だと分かった後も、俺はずっと一人で戦い続けた。救いの手を差し伸べられても、意地から拒んでいた」
「ぽよ・・・・・・・・・」
「初めて会った時の話を思い出せば、シリカも俺と同じだった。母親は同僚に殺されたのだと思い込み、誰彼構わず銃を突きつけ、暴れに暴れまくって、沢山の人々を敵に回した」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なあ、エミジさんよ」
「?」
「誰よりもシリカを愛しているんだったら、シリカと俺の共通点が何か、分かるだろ?遠慮せずに言ってみろよ」
下らない質問。
だが洞察力に優れた俺はすぐに分かった。
「・・・・・・・・・孤独・・・?」
今の話を聞く限りでは、それ以外の適切な言葉は見つからない。
「そ。どっちも味方が少なかった。特にシリカは、な」
「多分今もそうだし、これからもそうなんじゃないかって思う。カービィ達という味方がいても、すぐ近くに頼れる人がいなくて、いつまでもひとりぼっちで・・・」
「・・・だから・・・・・・」
「だから、シリカには俺がずっとついていなきゃダメなんだ!一人にさせておくのは耐えられないし、俺が一人になるのも耐えられない!どっちも嫌だ!!」
「・・・・・・・・・そろそろ答えを聞かせてもらおうか。これ以上は時間の無駄だ」
「本当に愛しているのか、なんて聞かれたら俺はどうとも答えられない。でも、これだけは確実に言える!!」
「俺はシリカを守りたい!!死ぬまで一緒に生きたい!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
シリカはあまりの嬉しさに涙が止まらなかった。
畜生、俺が泣かそうとしたのに。
いや、そんな事はこの際どうだっていい。
これであいつの心の内がはっきり分かった。
「・・・素晴らしい。何のヒネりも無いくせに気持ちがストレートに伝わってきた。いいだろう!!」
奴は単なる障害物ではなく、己が全力を尽くして排除すべき宿敵だ!!
「カービィ。こいつをしばらく預かってもらう」
カービィの傍まで移動し、愛しいシリカをワープスターの上に乗せた。
「これで気兼ねなく殺れるな、クソガキ・・・・・・いや、ナックルジョー!」
「お前の心、徹底的に砕き潰す!!!」
「こっちこそてめぇの捻じ曲がった愛情、叩き直してやる!!!」
2つの金色が今、激しく交錯する。
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