section1

 

 

 
 
 
午前
 
レストランカワサキ
 
 
 
「あん?お前に親戚ぃ?」
リムラは目の前に出されたレバニラ炒めにがっつきながら話していた。
「ええ」
「そんな話、一言も聞いてねーぞ」
「当たり前でしょ、わざわざ赤の他人に話すはずないじゃない」
「くっ・・・・・・!!」
勢いで箸をへし折った。
「まあまあ。で、今日は親戚の双子の姉妹が来るって話だが」と、リムル。
「ああ。それで悪いんだけどさ、二人とも」
「「ん?」」
 
 
「二人がププビレッジにやってきたら、視界に入らないようにしてくれよ」
 
 
.「・・・・・・は?」
何を言いたいのかさっぱり分からない。
「そいつはどういう当てつけかな~、ブンく~ん?」
「そういう意味じゃなくて!要はあの子たち・・・・・・怖がりなのよ」
「「?」」
怖がりなのは分かるが、なぜそれで自分達が彼女らの視界から消え失せなければならないのか。
「それも極度の、な。姉の方はもっとひでぇぜ?多分カービィを初めて見たら卒倒しちまうんじゃないかってほど酷い」
「まじで?」
カービィのどこに怖がる要素などあるのだろうか・・・
「ちなみにカービィはお家で大人しくさせてるわ。トッコリが面倒見てる」
「おまけに、自分の妹を差し置いて逃げ出したり・・・」
「分からんでもない」
リムルが即答した。
「ちょ、まさか俺の事を言ってるんじゃねえだろうな!?」
「YES」
再び即答。
「俺はそこまでチキンじゃねえっての!!」
「じゃあヘタレ」
「ヘタレでもなーーーい!!!」
「あの・・・・・・もう一つ注意して欲しいことが・・・・・・」
「「へ?」」
 
 
 
 
 
プププランド駅改札口前
 
 
「待ち時間利用して花買って来たぜ」
頭の上に鮮やかな色の花が入った大きな植木鉢を乗せ、リムラが遅れて来た。
「重いっ!!」
あまりの重さに耐えかねるとヘッドパスで植木鉢を放り投げ、持ち手をリムルに託した。
「俺の代わりに持て、リムル!」
「おわっ、何しとんじゃあ!!?」
慌ててキャッチするリムル。
「この野郎・・・・・・・・・」
「ま、なんも無ぇよかマシだろ」
睨みつけるリムルを軽くスルーした。
「あなたにしては気が効くのね。でもあの子達はむしろ・・・」
「あん?花じゃ不満ってか?」
リムラの行動は自主的なものだったので、改めて買い直すこと自体に不満は無かった。しかし、返ってきた答えは・・・
「・・・むしろ、お肉の方が好きなのよね」
2人の目が点になった。
「・・・・・・肉?」
「ええ。あの子たち育ち盛りだから」
「・・・霜降り肉買ってきたら喜ぶかな」
ぼそりと呟いた。
「やめるんだリムラ!俺達の食費が!!」
「まあまあ、リムル・・・・・・(あいつらが大きくなったら、これをネタに恩返ししてもらうからノープロブレムだ!)」
「・・・・・・アフォめ(どんだけ長期計画なんだよ!?)」
 
 
「もうそろそろ来るんじゃね?」
「ええ。だからあなた達はどこかに行ってるか、地面に隠れて!」
「地面に隠れろって・・・あのなぁ・・・・・・」
リムラ、リムルは勢いをつけて地面に潜り込み、平べったい影の形になった。
(そんな簡単に言うなよな・・・)
「簡単にやってるじゃん」
(お前らが思ってる以上に集中力要るの!持って10分が限界だから、立ち話あんまりすんなよ!)
 
 
 
『ピンポンパンポーン・・・・・・まもなく一番線に、当駅止まりの列車が参ります。白線の内側にお下がりください』
 
 
 
「来たわね」
不細工な顔面の蒸気機関車が客車を牽引してやって来た。
(アレに乗ってるはずなのか?)
「ええ。運行に支障が無ければそのはずだけど・・・・・・」
列車はスピードを落とし、動きが段々と遅くなった。
(そういやリムロ昨日から帰ってきてねーなー)
(どうでもええわ)
完全に停止し、乗客が次々と降りてきた。
(俺ら顔分かんねぇかんな。後はお前らに任せたぞ)
「言われなくたって」
改札口を出る一人ひとりに注意を利かせるフーム達だったが、あの姉妹の姿はどこにも無い。
「・・・・・・来ねぇな」
「おかしいわね・・・・・・この時間に来るって電話も来てたのに」
(どーせ乗り遅れてるんだろ。次の列車で来るって)
「でも、これは大陸横断鉄道よ?列車同士の間隔どれだけ広いと思ってるの?」
隣駅からプププランドまでの場合、一本乗り遅れると次の列車が来るまで1時間かかる。
彼女らも退屈な時間を過ごす気にはなれないだろうから、間に合うように乗っていてもおかしくないはずなのだが・・・
「・・・・・・あ!姉ちゃん、最後に誰か降りてきたぜ!?」
ブンの指差した先には、列車最後尾の乗降口から降りてきた黒い球体が居た。
「駅員さーーーん!!俺一人じゃどうしようもないから助けてーーーーーー!!!!」
リムラ、リムルはその声に聞き覚えがあった。まさか。
(・・・リムラ、今の声・・・・・・)
(・・・リムロだよな・・・?でも一体何が・・・)
「この子達、俺の事怖がりすぎて手がつけられないんだよ!あっ、気絶したぁ!!?」
「怖がりすぎ・・・・・・気絶・・・・・・・・・」
フーム達には心当たりがありすぎた。
「まさか!!」
改札口を乗り越え、最後尾へ急ぐ。
リムロを押しのけ(本人が凄い勢いで仰け反って)窓から車内の様子を確認した。
「やっぱり・・・・・・!」
「え?何なの?まさかとは思うけど、やっぱお前このがきんちょ達の知り合い?」
事態を把握できていないリムロが恐る恐る尋ねた。
「知り合いも何も、パパの親戚の子達よ!!あんた一体何したの!?」
「何もしてない!!変な言いがかりはよせっての!」
俺は被害者だ、とばかりに必死に否定した。
「俺の顔見ただけで絶叫しやがって、失礼な奴らだ全く!!」
車内では一人の少女が気を失っていた。一緒にいたもう一人の少女はフームの存在に気づき
「あっ、フーム!!」
「シック!!リーロはどうしたの!?」
「どうしたも何も、外にいる真っ黒オバケが怖すぎて・・・・・・」
「真っ黒オバケぇ?」
俺の事だ、とばかりに怪訝な顔になった。
「まさかとは思ったけど・・・」
 
 
 
 
 
 
「案の定、気絶しちゃったのね・・・・・・」
 
 
 

 

 

 

 

<<前へ  リストに戻る  次へ>>