section3

 

 

 

 
 
 
 
深夜 デデデエクスプレス寝台車両内
 
 
「・・・・・・またアイスバーグに行かなきゃなんねぇのかよ、うう・・・・・・」
 
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「ええ!?そこら辺のビニール傘じゃダメなのかよぉ!!」
「当たり前よ!!その程度の傘じゃあの子たちを守れないわ!!」
「じゃあ、どうすれば・・・?」
「買いに行って!!アイスバーグまで今すぐ!!」
「ちょ、もうすぐ夜中なんすけど・・・・・・」
 
 
 
 
「彼女たちの命と、どっちが大事だと思    う    か    し    ら    ?」
 
 
 
 
「・・・・・・・・・・・・・・・行かせていただきます」
 
 
 
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かくしてリムロは己の招いたミスによって、再び極寒のアイスバーグへ向かわざるを得なくなってしまった。
「いいじゃねえかよ。今度は俺らもついてるんだから」
「しかし俺には運が良かったよ。たまたま今度の番組の野外ロケがアイスバーグだからな」
「ロケぇ?どーせまた食べ歩きだろ」
「いやいや、今回はお笑い芸人が体を張ったロケを敢行するという内容で・・・」
他愛の無い会話を聞くのもうんざりだったリムロは、早く眠ろうとベッド上で横になる。
「あーやだやだ。だいたい普通の傘でもいいだろうがよチクショウ・・・・・・」
自分が壊してしまった日傘、というより
 
“日傘の形をした高性能ビット”
 
と言ったほうが適切だろうか。とにかく双子のそれは自分たちですら見たことの無いもので、大変興味をそそられた。
「ポップスターにもすげぇ技術があったもんだ」
「けど変だよなぁ。宇宙国連の調査ではこんな技術発見されてなかったぜ」
「ふっしぎー。つか眠いからもう寝るぜ、俺ぁ」
疲れきったリムロはそのまま深い眠りについた。
「・・・俺らは逆に目が冴えて眠れねぇや。リムル、ポーカーやんぞポーカー」
「ええ~、頼むから寝かせてくれよー」
「俺は眠れないんだよぉ!」
 
 
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プププランド デデデ城
 
 
 
 
 
「エスカルゴ~ン、頼むからワシと一緒にゲームしてくれぞ~い!」
「嫌でゲス!大体もう夜中の12時でゲスぞ!?」
眠れないのはこちらも同じだった。
「こっちは目が冴えて眠れんぞい!ワシと一緒に“デデデのエアライド”のキャッスルトライアルで対決ぞい!!」
「だったら尚更嫌でゲス!!いっつもイベントで魔獣襲来とかゲラス落下とか発生してはワタクシが巻き込まれて・・・もうウンザリでゲス!!」
「そこは運任せだから仕方ないぞい!つべこべ言わずに徹夜で付き合うぞい!!」
「嫌だ~~~!!!」
エスカルゴンはこの場から逃れるべく頭の中で色々模索してみたが、良い案が思い浮かばない。
こういう事に関してだけは、デデデの執念は恐ろしい。
「ったくもう、しつこいったらありゃしねぇんだからこのオヤジ・・・・・・ん?あれっ!?」
「?」
エスカルゴンが何かに気づいた。尻尾を掴んでいたデデデも思わず手を離す。
「どうしたぞい?」
「あれ!ほら、あれっ!!!」
指差す先には、大臣一家の部屋と接するバルコニー。そこに3人の人影が見えたのがデデデにはハッキリ分かった。
「・・・真ん中いるのはブンか?その両脇にいるガキんちょは・・・・・・誰ぞい?」
彼と話をしている二人の少女だけは見覚えがなかった。
「さあ?」
「・・・もしや、ブンのガールフレンドか!!」
「ああ、十分ありうるでゲスな」
「しかも二人とな!?おのれぇ・・・なんというふしだらなガキぞい!!!」
「はい!?」
どう考えてもただの勘違いだった。
「行くぞい!!」
「あの?ちょっと何勘違いしちゃってんの、あのオッサン?」
 
 
 
 
 
 
「ちょ、ちょっと何なのよいきなり!?」
行く手を阻もうとしたフームを強引に押しのけ、デデデは目的のバルコニーへズカズカと歩いていった。
「おい、ブン!!!」
「わあっ!?」
いきなり後ろから怒鳴られ驚くブンだったが、誰よりも驚いたのが
 
 
「ひぃっ、クチビルオバケ!!!」
「わぁっ、ブサイクペンギン!!!」
 
 
他でもない、リーロとシックだった。
「何なんだよ、デデデ!?」
「それはこっちの台詞ぞい!!そもそもこのガキども、ワシの顔を見るなりオバケの類と勘違いしおって!!!」
「この二人は怖がりなんだよ!!お前の暑苦しい顔なんか目の毒だ!!」
「なっ・・・・・・・・・!!!」
顔と向かって非常にショッキングな言葉を突きつけられ、更に怒りを募らせるデデデ。
「ぷふっ!そりゃあ陛下の顔を見て驚かない子供はいないでゲス、って、痛っ!!!」
案の定ハンマーで叩き潰され
「いや、この際そんなのどうだっていい!!ブン、よもや貴様がプレイボーイだとは思いもしなかったぞい!!!」
「はぁ!!?」
もちろん当人は身に覚えが無い。
「いたいけな少女を二人もはべらせおってからに、なんちゅう女たらしぞい!!!」
 
 
「何言ってんだよ!!こいつらは俺の好きな人でもなんでもないの!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
「「!!!!」」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
恋人でもなんでもない。その一言にショックを受けたのは傍の双子だった。
「え・・・・・・・・・?」
「兄さま、俺たちのこと・・・嫌いなの・・・・・・?」
「え?あ・・・!?」
思わぬ誤解を与えてしまったことに気づくと、慌てて
「ち、違うってば!今のは“恋人同士の関係じゃない”って意味だよ!!」
何とか分かってもらおうとするが、かえって逆効果だった。
「・・・僕、お兄ちゃんのこと、ずっと好きだったのに・・・・・・!!」
「“僕”ぅ!?“お兄ちゃん”!?」
「やっぱり兄さま、俺たちのこと嫌いなんだ・・・・・・!!」
「”俺”ぇ!?そして“兄さま”ぁ!!??」
 
 
 
 
 
 
 
 
「「な、何てマニアックなプレイぞい/でゲスか・・・・・・!!!!」」
 
 
 
 
 
 
 
 
本当の事を知らないとはいえ、さすがのデデデとエスカルゴンもドン引きだった。
「違うぅ!!これは誤解だぁ!!!」
「ブン!!!」
「何だよ姉ちゃん!!?」
 
 
 
 
「馬鹿馬鹿しくて面倒見切れないわ。あとは自分で解決してちょうだい!!!!」
 
 
 
 
 
「ひ、ひでぇよ姉ちゃーーーーーーーーん!!!!」
実の姉にまで見放され、状況はもはや最悪、四面楚歌。
「パーム大臣!!今回の一件は貴様の教育に問題があると見たぞい!!!」
「え!?いえ違います陛下!!これは誤解・・・・・・」
「言い訳無用!!・・・・・・ブン、お前も罪な子供でゲスなぁ~~~?」
「だから違うってば!!!」
「お願いお兄ちゃん!!嘘だ、って言って!!!」
「俺、兄さまが喜ぶこと何だってするから!!だから嫌いになんないでよぉ!!!」
「えっと・・・・・・・だから・・・・・・!!」
「「ブン!!!!」」
「「お兄ちゃん/兄さま!!!!」」
「その・・・・・・・・・えっとぉ・・・・・・・・・!!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「誰か助けてくれぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
 
 
 

 

 

 

 

 

 

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