「それにしても驚いたわ。夜中にトイレ行こうと廊下に出たら、あなたが血塗れで歩いていたんですもの!!」
デデデが血痕云々で騒ぎ立てた以前に、シリカ本人を先に見つけたのはフームだった。
「私が見つけなかったら今頃、デデデに酷い目に遭わされていたと思うわ!あいつ、あなたに対して良い印象持ってないから」
フームに匿われた際、彼女の手当てを受けることでどうにか一命を取り留めた。
体の所々に巻かれた包帯は、見ていて少々痛々しい。
「・・・・・・・・・・・・ごめん、なんだか迷惑かけて・・・・・・」
申し訳無さそうに謝罪するシリカに対し、フームは全く気にする様子も無い。
「いいのよ、ナイトメアを倒すために一緒に戦った仲なんだから。・・・それよりも、なぜあんな姿で?」
「・・・・・・・・・・・・」
「あ、いいのよ無理に話さなくて。・・・・・・あなたが危険な目に遭っているのに、何も手助け出来ないのは少し辛いけど・・・・・・・・・」
「・・・・・・あいつに狙われていた」
ぼそりと呟く。
「え?」
「他の惑星で、命を狙われていた。銀河戦士団の裏切り者、ヤミカゲに!!」
「ヤミ・・・・・・カゲ・・・・・・・・・・・・?」
「そう。奴は確実に私を殺すため、巧妙な手口でおびき出した」
「巧妙な・・・?」
「元々、私とジョーはある人物からの依頼で、ある惑星へ調査のためにやって来た。
そこは過去にナイトメア社の襲撃を受け、廃墟と化した星。ジョーは前に一度来たって言ってたわね。死にかけたらしいけど。
その星には危険な破壊兵器群が放置されているとの事で、回収、あるいは破壊目的で私たちが呼び出されたというわけ。
でも、依頼の話は真っ赤な嘘だった。先発の調査隊は既に、忍者装束の連中に殺されていた。
私たちは必死に戦ったけど、黒幕のヤミカゲが仕掛けた策略でジョーと離れ離れに・・・・・・!!!」
「おーい!フームはいるかぁ!?」
話をさえぎり、空気の読めないトッコリが訪れてきた。
「おわぁ!?誰だったっけその女・・・・・・まあいいや、村で面白い事が起きてるぞ!!」
「面白い事・・・・・・・・・?」
「カービィと変な忍者が村中でドンパチやらかしてんだ!!早いとこカービィを応援しに行ったらどうだ!?」
「!!!!」
シリカの表情が険しくなる。
「まさか・・・・・・ヤミカゲ!?」フームは確信こそ持てなかったが、もしかしたら―――
「なんだ、知り合いなのか?」
「知り合いなんてものじゃないわ!!トッコリ、今すぐカービィに伝えて!ヤミカゲをデデデ城に近づけるなって!!」
「へ?なんでまt」
「い い か ら は や く!!!!」
「わわわ分かったよ!!今すぐ行きまーす!!!!」
ププビレッジ 中央広場
屋根の上からヤミカゲを見下ろすカービィ。すでに先鋒の攻撃の一部を吸い込み、ニンジャカービィに変身していた。
「そこだぁ!!」
対するヤミカゲ、取り出した八方手裏剣を素早く打ち出した。
『木っ端微塵の術!!』
しかしカービィは見計らっていたかのように回避、見事に姿を消した。
「ふん、見ない間に腕を上げたなカービィ!」
ヤミカゲの頭上に出現し、後頭部を狙いすます。
『ニンジャキック!!』
ヤミカゲは瞬時に前へかわす。段々と動きにキレが戻り始めていた。
「ふっ、お前のおかげで現役時代のカンを取り戻してきた・・・・・・さて、仕事に戻るとするか・・・・・・!」
『はたき切・・・』
カービィは一瞬の隙を突いたつもりだったが、ヤミカゲは煙玉を地面に叩きつけ、煙幕と共に消えてしまった。
「何やってんだよカービィ!!」
やっと近づける状況になり、カービィの傍にトッコリが近づく。
「ヤミカゲって言うのか?あの忍者野郎を城に近づけるな、ってお前に伝えるようフームから伝言を頼まれたんだ!!」
「ぽよ!?」
「あいつ、フームの友達の命を狙ってるとかナントカ・・・・・・とにかくあいつを早いとこ捕まえろ!さっきの口ぶりじゃあ、今頃城に向かっちまってるはずだ!!!」
「ぽよ!!!」
デデデ城テラス ププビレッジ方面
カービィとヤミカゲの戦いを文字通り「高みの見物」をしていた者が、ここに2人いた。
「おのれヤミカゲぇ~、いきなり戻ってくるなりワシの国で暴れたい放題とは、いい身分ぞい!!」
双眼鏡を構える手は怒りに震えていた。
彼にはヤミカゲが元銀河戦士団という認識は無い。そもそもカスタマーが詳しい説明を省いたことにより、むしろ「魔獣」の認識が強かった。
「おそらく怪事件の正体は、あいつぞい!!」
「まあ、確かに・・・・・・怪我を癒すため、この国のどこかに潜伏していたと考えると、不自然ではないでゲス・・・」
「そうと分かれば、今度こそ兵士を総動員させ、あのテロリストをつるし上げるぞい!!」
「もうワドルディ達はくたくたでゲス。誰も行く気にはならないでゲしょうね~」
「うぬぬぬぬぬ・・・・・・・・・!!!!」
フームの私室
「・・・という訳なの、メタナイト卿」
事情を説明すべく、ブンとメタナイト卿を自室に呼び出した。
「・・・・・・なるほど。あのヤミカゲが・・・」
「なんてこった・・・・・・!」
「カービィには必死で食い止めるよう伝えたんだけど、いずれ城にやって来るのは間違いない」
「となれば、力ずくで追い出すしかないな」
腰の柄に手をかけた。
同じ戦士団の者として、彼だけは己の手で仕留めたいというささやかな願いも込められていた。
「そうしようぜ姉ちゃん!!ワープスターでカービィを呼び出せば・・・・・・」
「でも、まだヤミカゲが村にいたとしたら・・・・・・?」
「あ!!」
「ワープスターで城に向かう所を見られたら、シリカの居場所が此処だとバレるのは確実・・・・・・」
『メタナイトぉ!メタナイトはおるかぁ!!』
「デデデだわ!隠れて、シリカ!!」
言われるがままに慌ててベッドの下に身を潜めた。
『兵士の話ではここだと聞いたでゲスよ!!』
『はようドアを開けい!!』
「・・・皆はここで待ってくれ」
困り者の独裁者を相手するべく扉を開け、廊下に出た。
「・・・どうだったの、メタナイト卿?」
話が終わったのか、扉が開いた。
「・・・・・・すまない、こんな時に陛下の護衛を頼まれてしまった。」
「何ですってぇ?!」
「まあ、断っておいたので安心してくれ。しかし気をつけろ」
一呼吸置き、彼女らへ一つの注意を促す。
「ヤミカゲは本当に恐ろしい男だ。どんな手段を隠しているかは分からない・・・・!」
「ええ!!!」
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