常夜の星の戦い:2

 

 

 

一方、洞窟を進んでいたるジョーとシリカはと言うと、相変わらず辺りを警戒しながら進んでいた。


「・・・まだ何も出て来ねえな」

「ええ・・・」


彼らは洞窟に入ってから大分奥の方までやって来ていた。
そのせいかは知らないが、徐々に広い空間に出始めている。
だがここに来るまで、目立った罠や魔獣はいなかった。

しかも誰もいないと言う洞窟で、なおかつ何も起きていない為に、
辺りは2人が洞窟を歩く音以外何も聞こえず、静かであった・・・


「なんか、こうも何も無いと返って気味悪いわね」

「ああ、そうだな」


だが、次の瞬間。ようやく、この静寂は破られる事となった・・・










ドドドドドドドドドドドド!








「「!?」」


突如奥から洞窟全体を揺るがすような轟音が響き渡った。
そしてそれは、だんだんこちらに近付いている事が分かった。

それを察しジョーとシリカは歩く足を止め、身構える。


「やれやれ、ようやく来なさったみたいだな」

「ええ。でも、この凄い音・・・相手は大型の魔獣?それとも・・・」

「どっちでも構わねえよ。
どんなのが相手だろうと、掛かって来やがれってんだ!」


そう意気込むナックルジョー。
そして、次第に奥の方から轟音の正体と思われる影が近付き、
その姿もはっきりと見えて来た・・・

そして・・・










「な、何これ・・・?」

「お、おいおい・・・嘘だろ?」


轟音の正体を見た途端、ジョーどころかシリカも唖然とした表情で固まってしまった。

何故なら・・・





『オオォォォォォォォォォ!!!!!!』


それは何百・・・いや何千匹も及ぶ大量の魔獣の群れだったからである!


「ちょっと待てよ!こんなに沢山いるなんて聞いてねえぞ!」


大量の魔獣が来る事は予想していたが、
想像以上の量を前に、思わず悪態をつくジョー。


「あら?でもアンタ今、
"どんな奴だろうか掛かって来い"って言わなかったかしら?」


そんな彼を見てからかうように言葉を投げかけるシリカ。


「た、確かにそう言ったけど、
いくらなんでもこれは多過ぎだろ!だいいちここ、洞窟の中だぜ?」

「ま、それも言えてるわね」


「もぎいぃぃぃぃぃ!!」




ドゴオォォォォっ!!!



とその時。2人のやり取りを邪魔するかのごとく、群れの中から灰色で機械の手足と、
目の代わりに横側にライトを取り付け赤く光るバイザーを、口の代わりにドリルが取り付けられた
土竜のサイボーグ魔獣、モギーが飛び出し突撃。

その一撃は地面を砕く事には成功したが、
その攻撃のターゲットであったジョーとシリカは寸前のところで回避した。


「ぎいぃ――!!」


「ふぅ・・・」

「危なかった・・・ってうわ!?」


『ギャーギャー!!』


だが、モギーの攻撃も回避したのもつかの間。
今度は他の雑魚魔獣の群れが容赦無しに襲い掛かって来た。


「くっ!どうやらやる気満々のようだな」

「ねえ、どうするの?ジョー」

「どうするもこうするも、
ここまで来た以上、もうやるしかねえだろ!行くぞシリカ!!」

「そうね。分かったわ!」


そう言うとジョーは拳をシリカは改造銃を構え、完全に戦闘態勢に突入。

襲い来る魔獣の群れに立ち向かうのであった。









その頃、洞窟の奥・・・



「ヒーッヒッヒッヒ!よーやく始まった始まったぁ!!」


やはりあの何者かが、
2人が魔獣の群れに立ち向かっていく姿をモニター越しで観戦していた。


「ヒッヒッヒ!
さあ、後はコイツらがどうジョー達を弱らせていくかだな」

「グルル・・・?」


テンション高くそう言った何者かに対し、
後ろから獣が心配そうな声で唸っている。

どうやら、魔獣の群れがジョー達を
倒してしまうんじゃないかと、心配しているようだ。


「だいじょーぶよぉ!そうならない為にも、
あの2人を消耗させられる程度の実力しか持ってない
メンツを行かせてあるからよぉ!」

「グル?」

「ああ、大丈夫大丈夫!嘘だと思うなら、お前もこれをずーっと見てな」

「グオォ」


そう何者かに言われるがままに、獣もモニターへ目を移す。
そして何者かは、自分達が出るタイミングがまだかまだかと
心の中で待ち詫びるのだった・・・









「バルカンジャブ!」

『ピー!ギャー!!』




ダダダダ!ブオォォォォォォ!!ドォ―――――ン!!!!



その頃ナックルジョーとシリカの所では、
ジョーのファイター技やシリカの改造銃によりミサイルや火炎放射、
マシンガン、そして魔獣達の攻撃が飛び交い、
それはもう凄まじい戦いとなっていた。



「ウフォオオォォォ!!」

「おっと!喰らわないぜ・・・スマッシュパンチ!!」


一際身体がデカく、見るからにパワータイプな
茶色のゴリラ型の魔獣、ケーディーが太い腕を振り下ろして
ジョーを攻撃しようとするも、彼はそれを転がりながらかわし、
そして起きる同時に、その腹にスマッシュパンチを炸裂させた。


「うぐぉっ!?」


見事、その一撃ケーディーは音を立ててその場に崩れた。

だが・・・





「ピピピ・・・コウゲキ、コウゲキ・・・・」


ジョーの後ろに、ダンガムが迫っていた。
そして当のジョーはそれに気付いていない。
それを良い事に、ダンガムはズンズンとジョーに近寄って行くが・・・?





バヒュン・・・



ズドオォォォォォォォォン!!!!





今まさにジョーのすぐ近くまで迫った所で、突如ミサイルが横から飛んで来て直撃。
そのまま爆発を起こして大破した。


「え!?」


無論鳴り響いた爆発音に気付いたジョーは、後ろを振り返った。
するとそこには、爆発により煙を上げる残骸に姿を変えた
ダンガムに、改造銃を構えたシリカの姿があった。

そしてシリカはジョーの方を見ると、こう言った。


「後方注意。大群と戦ってるんだから、後ろにも気を配りなさい」

「へいへい。ご忠告ありがとうございますよっと!」

「え?!」


返事を返すと、ジョーは突然上空へジャンプ。
突然の行動に驚くシリカをよそに、彼はそのまま
彼女の後ろ側まで飛び越え、そしてすぐさまキックの体勢に
入るとそのまま一気に急降下した。

すると・・・?





ドガン!




「もぎゃあぁぁ・・・!!!?」


ズ―――ン!!



シリカの後ろで何かを蹴ったような鈍い音と共に、
大きい何かが倒れた音が鳴り響いた。

これにシリカは後ろを振り返ると、
そこにはモギーが倒れており、その前にはジョーが立っていた。

しかもその姿を良く見てみると、モギーの下半身は土の中に埋まっており、
上半身だけが地面から出ている状態だった。

その姿を見たシリカは、それがどさくさに紛れて土の中に潜り、そして自分の後ろに回り込んで
土から飛び出して不意打ちをしようとしていたが、丁度自身の後ろ側を見ていたジョーがそれに気付き、
攻撃したのだとすぐに分かった。

そして、そのモギーは先程の一撃でによる衝撃で
頭の中の機械が壊れたのか、バイザーやその横に取り付けられたライトから光が消えており、
動きが完全に止まっていた。

それからその前に立つジョーは、シリカを見るとこう言った。


「後方注意。大群と戦ってるんだ。後ろにも気を配りな」

「ご忠告ありがとう」


まさかこんなにすぐに自分が彼に
言った言葉を自分に返されるとは思わなかった。

これにシリカは自分もまだまだだと心の中で感じ、
同時に助けてくれたジョーに感謝した。



『ガニィー―――っ!!!!ギャーギャー!!!!』


だが、そう思ったのもつかの間。

甲殻魔獣ガーニィ・ラアスを始め、残りの魔獣の群れも迫ってくる。


「おっと!まだ来るみたいだぜ」

「そのようね。行くわよ!」

「おう!」


そうして、2人は迫りくる魔獣の群れへ突撃!

果敢に立ち向かって行った。














「スマッシュパンチ!!」

「キギャ――!!」


「たあああ!!」

「グオ―――!!」


それからかれこれ数分後・・・

始めは数で圧倒されると思われたが、相手は今の2人の実力で
勝てないような魔獣ではなかった為に、ジョーとシリカが圧倒的に優勢だった。

そして、戦っている内にある魔獣はガーニィ・ラアスのように
シリカの改造銃で焼かれて赤く変色して倒れ、
またある魔獣は深手を負って逃げ出したりした。

その為に時間が経つにつれて数千匹いた魔獣の群れは
徐々に数が減っていき、そして今はもう数え程度しかいなかった。


もちろん、これは洞窟の奥に潜む何者かがこうなるように仕組んでいた事であり、この時の2人はその事にまだ気付いていない・・・




そして洞窟の奥・・・



「おーおー!上手い具合に減ってる減ってるぅ!!」


モニターに映る2人の状況を見ていた何者かは、画面の前で喜んでいる。


「よーしよぉ――し!!こんなに減らすほど戦ったと言う事は、
奴らはその分そうとうの疲れが溜まったはずだ。
よし!そろそろオレーチャン達を行くぜ!
ついにお前の兄弟の敵討ちだ!!ヒーッヒッヒッヒ!!!!」


「グオオオオオオ!!!!」


そうして、ついに何者かも獣を連れて、ジョー達の下へ向かって行った・・・





「バルカンジャブ!!」

「キー!?ギャギャ!!」


一方未だ戦闘中のジョーとシリカだったが、
もうすでに魔獣は残り1匹になっていた。

そして、その魔獣はバルカンジャブを受けて負傷。
戦闘続行不能と踏んで逃げ出そうとしていた。


だが・・・




「今度は逃がさないわよ!」

「ギィ?・・・・グギャアアアアアア!!」


魔獣の前にシリカが立ちはだかる。

そして彼女はそれと同時に改造銃を火炎放射器に変えると、容赦無しに魔獣を焼き尽くしたのだった。


「うわ・・・相変わらず容赦ねぇな」

「当然よ。相手は魔獣よ?もし逃がしでもしたら、次に何をするか分からないわ。
・・・と言っても、戦闘中何匹か逃げたようだけど」

「そうだな。・・・それじゃあ、帰ったらそいつらの捜索を行う様、要請入れとくか?」

「それが良いわね。・・・はあ、しかし今日は疲れたわね」


さすがに数千匹もの魔獣を相手にして疲れたシリカは、溜め息混じりに言う。
無論、これはジョーも同じ事だ。


「ああ・・・今回は俺達で倒せるような奴らの集まりだったから
良かったけど、
もしアレが最強魔獣とかの集まりだったら、疲れるだけじゃ済まなかっただろうな」

「笑えない冗談ね」


そんなやり取りをして、2人はお互いクスリと笑いあう。


「それじゃあ。一応魔獣は片づけた事だし、帰りましょう」

「ああ・・・!?」


その時だった。

ジョーは何かの気配に気付いたように、洞窟の奥の方を見た。


「どうしたの?ジョー・・・」

「危ない!」

「え・・・?きゃっ!」


突如ジョーがシリカを庇うかのように押し倒すと、それとほぼ同時に奥のほうから黒い鞭らしきものが
蛇のように伸びてきて、地面を打ち付けた。


これは、どう見ても奥にいる誰かの手による不意打ち。


どうやらジョーは奥に何者かの気配を感じ、そして自分達を攻撃しようとしている事に気付いたらしい。


「・・・大丈夫か?」

「え?ええ・・・」


ジョーの問い掛けに、素直に答えるシリカ。

まさか、自分が2回も彼に助けられるとは思わなかった。


しかも今度は体を張って助けたが為に、良く見れば今自分のすぐ上にジョーの体と顔があった。


それに気付くとシリカは顔を赤くなった。そして・・・




「じょ、ジョー・・・?」

「なんだ?」

「あの・・・助けてくれて、ありがとう」

「え?」


彼女はジョーに感謝の言葉を述べる。

一方のジョーは、突然のそれに珍しく間の抜けた声を出しながら
シリカと同様に顔を赤くすると、
いつもの癖で鼻の下を指で擦りながら、

「と、当然の事をしたまでだよ」

と若干戸惑い気味に答えた。

この様子を見てシリカの顔から笑みがこぼれた。


「・・・お、おいおいおい!オメーらなーに敵を前にしてイチャイチャしてやがんだこるぁ!!」


とその時、そんな2人の様子に不意打ちを掛けた何者かが怒声を飛ばす。

この声にジョーとシリカは今の自分達の状況を思い出し、
急いで離れると即座に身構える。


「だ、誰だ!?」

「正体を現しなさい!」

「おうおうおう、そう急くなって!言われなくとも出て来てやるからさ!」


そう言うとゆっくりとこちらへ歩み寄り、奥の暗闇から徐々にその姿を見せ始める何者か。

いったい何者だろうか?

言葉を喋ったところを見る限り、
恐らく今回の罠を張った黒幕である事は間違い無いだろう。

そうこう考えている内に何者かの姿が徐々にはっきりして来た・・・


2人の間に緊張が走る・・・



そして・・・














「なっ!?」

「お、お前は!」


何者かが完全に姿を現した途端、2人は余りにも信じられない様子で
驚きの声を上げた。

その何者かはピエロの姿をしており、その片手には先程不意打ちの際に使ったと思われる、鞭が握られていた。


鞭を持ったピエロ・・・


ジョーとシリカ・・・
特に一度ナイトメア社に潜り込んだ事のあるジョーは
その姿に見覚えがあった。

それはかつてナイトメアが魔獣調教で魔獣ではない者を凶暴な魔獣に変える為に、
生み出し、そしてある一件でカービィに倒されたはずの存在・・・






「「調教魔獣ヒッティー!?」」






「ヒーッヒッヒッヒ!そのご様子からして、どーやらオレーチャンの事を知ってるよーだね!ヒッ!」

「ああ、嫌でも知ってるさ。ナイトメア要塞に行った時に、魔獣養成学校でお前が魔獣に教育している所を散々見かけたからな」

「あら?オレーチャンの学校での活躍見ててくれたの?そぉりゃウレピー♪」


そう言いながら嬉しそうに、ヒッティーは踊るような動きでその場で回った。


「でも、どうしてお前がここの?
アンタはカービィにブラックホールへ放り込まれたんじゃなかったの?」


そんなヒッティーに疑問を投げかけるシリカ。

そう・・・


メタナイトの話しに寄れば、ヒッティーはカービィにブラックホールに放り込まれ、
もうこちらの宇宙には戻ってこれないはずだ。
それが何故この星にいるのだろうか?

それ以前に、ヒッティーはこんなにお喋りな魔獣だっただろうか?


そんな疑問に答える為か、ヒッティーは語り始めた。



「そうよ。オレーチャンは確かにブラックホールで二度と戻れない別宇宙に飛ばされた。
だがよ!オレーチャンはとーっても運が良かったのよ」

「運が良かった?」

「おうよ!何故ならオレーチャンはホワイトホールから向こうの宇宙に吐き出された所、
たまたまそこを通りかかった宇宙船に助けられたのよ!
そしてそして、その助けてくれた奴が優しくてよぉ・・・
オレーチャンがこっちに戻りたくて困ってると感じてか、こっちに帰る方法を探してくれたのよ!!」

「なるほど。それで?」

「それでよ、長い間探しに探し回った結果、よーやくこっちの宇宙に帰れる機械を見付け、
それでそいつに別れを告げて、こっちの宇宙に帰って来れたって訳!
ついでにそいつと一緒にいたおかげで、お喋りの楽しさに気付き、
このように笑う以外に会話する事も出来るようにもなれたんだぜ!
ヒーッヒッヒッヒ!!あ、何かテンション上がって来たからジャグリングしよっと」


そう言いながらヒッティーは小さな鉄球を3つほど取りだすと、ご機嫌な様子でジャグリングをし始めた。


「なるほどね」

「それで魔獣達をかき集めて、今回の罠を張ったと・・・」

「ヒーッヒッヒのヒー!そうそう、そのとーり・・・ってえ?!」


大方の事情を把握したジョーとシリカの言葉にヒッティーは固まり、
そのせいで突如ジャグリングが止まった事で自由を失った鉄球がボトボトと音を立てて地面に落ちた。

そしてヒッティーは今のが何かの聞き間違いかと思ったのか、確認するかのごとくジョーとシリカに言った。


「お、おいお前ら!今罠を張ったとか言わなかったか?!」

「言ったけど?」

「う、うそーん!?ま、まさかまさか、魔獣の目撃情報はオレーチャンの仲間が流したニセモンで、
おめーらを誘き寄せる為のものだったって事知ってたのぉ!?」

「ええ、もちろん」

「だって、この星一般人は寄り付かないんだぜ?バレバレだっつーの」

「あ"あ"あ"あ"あ"・・・!そそそ、そうだったあ!!すっかり忘れてたあぁぁぁ・・・!」


頭を押さえ、やたらオーバーなリアクションでヒッティーは動揺した。

その姿に2人は思わず薄ら笑いを浮かべる。


「クスッ。ヒッティーってこんなに面白い魔獣だったのね」

「ああ、ちょっと馬鹿っぽいな。肝心の罠もあの程度の実力の魔獣達ばっかだったし」

「あああ・・・ヒッ?あの程度の実力の魔獣達ばっか?・・・ッヒ!ヒーッヒッヒッヒ!!」


とジョーの言葉を聞いた途端、ヒッティーは先程動揺していたのが一変、
突然笑い出した。


「こ、今度は何だ?!」

「へ、変な奴ね」


突然の変わり様に驚きを隠せないジョーとシリカ。

そんな2人を見てかヒッティーは笑うのを止め、急に冷静な面持ちで口を開いた。


「ヒーッヒッヒッヒッヒっのッヒ!すまんすまんいきなり笑い出して。
おめーらがオレーチャンの仕掛けたホントーの罠に気が付いてないのが
余りにもおかしくってよー!!」

「「本当の罠?」」


何を言っているのだろうか?

わざわざ人気の無いハーフムーンに自分達を誘き寄せ、
それから先程の魔獣の群れによる数の暴力で倒そうと言う作戦ではなかったのか?

何か別の思惑があって、あの魔獣の群れを送り込んだと言うのだろうか?


だとすれば、いったいアレは何の為に?




まさか・・・









そこまで考えると2人は何かに感付いた。

そして、その表情は一気に焦りの色を見せ始める。

それをヒッティーは見逃さなかった。


「ヒーッヒッヒッヒ!さすがは偽の目撃情報を見抜けた次世代星の戦士!
どーやらオレーチャンの本当の目的に気が付いたようだなあ!!」

「あ、ああ・・・」

「まさか、あの戦いそのものが罠だったなんて・・・」


そう、ようやく2人はあの魔獣の群れが自分達を消耗させる為の捨て駒で、
あの魔獣達との戦いが終わった所に強力な魔獣を送り込もうと言う
作戦だった事に気が付いたのだ。


だが、今頃気付いた所でもう遅かった。


今は平然と会話をしているが、彼らの体力は先程の戦いで確実に消耗いていた。
今の状態で強力な魔獣とまともに戦えるかどうか、かなり微妙な所である。


そして、この時2人は悟った・・・



まんまと敵の策にはまってしまったと・・・








「ヒーッヒッヒッヒ!今更気付いてももー遅い!今からテメーらは血祭りに上げられるんだからよ!よっしゃー!!よーやく出番だぜ!!」





「出て来い、オレーチャンの相棒よぉ!!!!」


ピシィッ!


そう言ってヒッティーが鞭を打ち付けると、奥から待っていたと言わんばかりに、一匹の獣が走りながら現れた。

そして、その姿を見たジョーとシリカ・・・特にシリカの顔が青ざめた。


「お、おいおいマジかよこれ・・・!」

「う・・・嘘でしょ・・・?!」



「グオオォォォォォォォォン!!!!」


洞窟の奥から現れ、咆哮を上げる獣・・・

2人は・・・特にシリカはその姿に見覚えがあった。


それは、忘れられようにも忘れられない。

宝剣ギャラクシアを奪い、ポップスターにまで現れた凶悪な存在・・・
そして、シリカの母ガールードの仇・・・


あの時現れたものと比べると、頭に角が生えておらず、体毛の色も明るめの青と違ってはいたものの、
自分達より2倍近くの巨体に、鋭角的な刃の手・・・
そしてゴーグルのような目が特徴的なゴリラのような姿・・・



間違いない。



















「魔獣・・・」

「キリサキン!?」

 

 

 

 

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